日記

道徳の授業の進め方を考える

公開日
2014/12/10
更新日
2014/12/11

仕事

小学校で授業アドバイスを行ってきました。今年3回目の訪問です。今回は通常学級の6名と特別支援の先生の授業アドバイスと若手の授業研究でした。特別支援以外はすべて道徳の授業でした。

道徳の授業はどの学級も副読本の「明るい心」を使い、展開例に従って授業を進めていました。資料の読み取りを助ける、場面の絵が全学年分そろっているので、それを上手く活用していました。ただ、この副読本では最後に自分の経験を振り返って終わるというのが基本的な流れです。しかし、過去ではなく明日からどのように行動するかということが大切になります。このことを子どもに迫ることを意識してほしいと思います。

1年生はまだ経験の浅い講師の授業でした。しかし、子どもたちによい表情が見られます。授業者が笑顔で子どもたちと接することを意識するようになった結果でしょう。子どもたちが集中したよい状態で授業は始まりました。
私たちが見ているので緊張したのでしょうか。授業者はしゃべりが少し早く、子どもたちの理解を超えたスピードです。また、資料の読み取りで説明が続くのでせっかくの子どもたちの集中が切れてしまいました。特に1年生は受け身の時間が長いとだれてしまいます。子どもたちはよく反応してくれるので、子どもとのやり取りを増やし、子ども同士をつなぐことを意識するとよいと思います。

5年生の授業は、主人公と母親とのやり取りを何組かの子どもたちに前で実際に演じさせていました。子どもたちはとても楽しそうに、集中して見ています。演技終了後に主人公の気持ちを子ども役に聞きます。子どもたちに感情移入させるよい方法の一つでしょう。ただ注意したいのは、この時の主人公の気持ちを全員に考えさせたいのかどうかです。もし、全員に考えさせたいのであれば、何人も指名して意見を言わせたり、互いに聞き合ったりする場面が必要になると思います。
この授業のねらいとはずれるかもしれませんが、主人公以外の視点で考えることも子どもたちに客観的に自分を見つめさせる有効な方法です。この読み物の主人公は母親の言葉をちゃんと聞かずに約束を破ることになったのですが、母親はどんな気持ちで声をかけたかを考えさせるのです。
授業の一部分しか見ていないので何とも言えないのですが、授業者はどこに時間をかけたかったのか、ちょっと疑問に思いました。というのは、子どもたちが演技をしていたのは読み物の最初の方です。経過時間から言って、後半の場面について考えさせる時間が足りなくなるのではないかと思ったからです。道徳では、読み物の内容理解よりは、子どもが自分のこととして考える時間の方が大切です。限られた時間の中でどうバランスを取るかを意識してほしいと思います。
副読本の展開例を参考にしながらも演技をさせるといった独自の工夫をしていることはとてもよいことと思います。子どもたちとの人間関係がよいこともあって、こういう工夫が有効と感じることが多いと思いますが、それとは別の視点、この工夫が授業のねらいにつながっていったかどうかも意識することもできると、より有効な場面で活用できるようになると思います。

4年生は自らを律することを意識させる課題でした。
子どもが主人公の気持ちを考えて発表するのですが他人事のようです。この主人公はこう考えたという読み取りになっていて、自分のことになっていません。子どもたちの内面に迫ることが大切です。主人公のした行動にそって考えるだけでなく、「あなたならどうする?」と考えさせたり、「状況が違ったらどうだろう?」と別の条件で主人公の行動を想像させたりすることも視野に入れてほしいと思います。

3年生は、ちょっと落ち着かない子どもがいる学級です。面白いのは私たちの姿を見て、子どもたちの様子が変わったことです。見られていることを意識したようです。
授業者は子どもたちに作業をさせている問など、すぐに机間指導をします。落ち着かない子どもが気になりすぎて、その子に素早く対応できるようにしているのです。この学級の子どもたちと授業者の関係は悪くありません。子どもたちの多くは、それほど問題はないのです。過敏にならずにゆったりと構え、普通の子どもをしっかり見守ることの方を優先してほしいと思います。この学級の子どもたちは、受け身の時間が続くと集中力が切れます。反応はするので、どんどん指名して意見を言わせると積極的に参加するはずです。思い切って子どもたちにたくさん活動させることを意識するとよいと思います。

2年生の1つ目の学級は、子どもたちにとって、この課題が自分のものとなっていないことが気になりました。一部に友だちの意見をちゃんと聞いていない子どもがいるのです。
授業者は子どもの意見をしっかり聞くのですが、それを受けてすぐに板書をしてしまいます。授業者が板書して黒板に向いている時に子どもたちの集中力が切れることも気になります。道徳では板書を写す必要がないからでしょうか、板書中は子どもたちにとってはリラックスタイムになっています。もっと子どもを指名して意見を言わせ、その上で子どもたちを揺さぶって自分に引き寄せて考えさせることが必要です。自分のこととして考えると、友だちの意見が気になります。子どもたちは、表面的に主人公の気持ちをなぞっているだけだったのです。

2年生のもう1つの授業は、子どもたちと授業者の関係のよさが印象的でした。
子どもたちは一生懸命に意見を言います。どんな意見でも授業者が温かく受け止めるので、そのことで子どもたちは満足してしまいます。発表して先生に認めてもらうことが目的化しているのです。ただ受容するだけでなく評価することで、その中身を意識させることも大切になります。この授業は道徳ですので評価は必要ではありませんが、「○○さんと似た意見の人?」と子ども同士をつなぐなどするとよいでしょう。教師と子どもだけでなく、子ども同士で認められることを意識するようになり、子ども同士の関係もよくなります。また、友だちの意見を聞こうとするようになり、意見や考えがつながって深まるようになります。

特別支援は、算数の授業でした。授業者は根気よく笑顔で子どもに接しています。子どもは序数と基数の違いや関係がよく理解できていないようです。1、2と物の数を数えることはできるのですが、数の大小がよくわかりません。7と8ではどちらの数が大きいかわからないのです。授業者はどう教えればいいか悩んでいました。
物を数えることはできますから、7つと8つの物を用意して、1つ、2つと声を出しながらそれぞれから同時に移動させます。7つまで来たところで、一方が7つあることとどちらが多いかを確認します。確認したところで8と数え、8つあることを確認して、8の方が多いことを納得させます。この方法で上手くいくかどうかわかりませんが、実物を使いながら、序数と基数をつなぐことをする必要があると思います。

見せていた方々それぞれに進歩している部分があり、だからこそ個々の課題が明確になっているように思いました。

授業研究については明日の日記で。