日記

これからが楽しみな若い先生の課題を考える

公開日
2014/12/16
更新日
2014/12/16

仕事

先日、小学校で今年度2回目の授業アドバイスを行ってきました。市内の全小学校での授業アドバイスの一環です。この日は、3人の若手の授業アドバイスを行いました。

1年生の算数は、繰り下がりのある引き算の授業でした。
13個なっている柿の実から9個取った残りはいくつという問題をデジタル教科書の図を見ながら把握します。「何をした?」と子どもに問いかけます。「柿を採った」という発言を認め、他にはないかと聞いたところ、「柿狩り」という言葉が出ました。授業者は柿「狩り」の説明をして、発言を「ありがとうございます」と認めました。同じことだと軽く扱わずに、きちんと受け止めて認めていることに、子どもたちに対する授業者の姿勢を感じました。こういった難しい言葉を子どもが使った場合は、その説明を発言者にさせるとよいのですが、この時間は算数であることや授業のねらいには直接つながらないことなので、このような扱いでよかったと思います。
数図ブロックについて、「何に使うか?」と問いかけるのですが子どもたちは戸惑います。どう答えていいかわからないのです。数図ブロックを使って「何をした?」とより具体的に聞くと子どもは答えやすかったと思います。特に低学年では、ちょっとした言葉の使い方で子どもの思考や発言は影響されます。授業者がねらう言葉を引き出すためにはどのような言葉を使って問いかけるとよいのかを子どももの目線で考えることが大切です。
何算かを考えるのに問題文のキーワードから考えさせます。文中に「のこり」という言葉があるから引き算という説明です。このように問題文の単語から演算を考えさせるという教え方をよく見ますが、これは注意してほしいと思います。キーワードだけを頼って、問題文を理解しようとしなくなるのです。問題文を理解して、その表わす状況からどういう計算をすればいいのかを考えるようしなければいけません。今回であれば、柿の実が全部で13個ある、そこから9個を採るということを問題文の絵をもとに操作し、求めるものは13個から9個を取り去った残りであることを確認して、引き算だと考えるのです。いきなり問題文から式を出すのではなく、間に具象をはさむのです。この具象を、必要に応じて半具象の数図ブロックやリボン図に置き換えて考えます。計算そのもののやり方を考えるのであれば、数と対応がつく数図ブロックを使いますし、演算だけに注目するのであれば、数が抽象化されているリボン図が使われます。
13−9で、3から9は引けないことを簡単に押さえました。これは大切なことです。「13は10と3、3から9は引けないね、どこから引こうか?」というように考えるヒントとなる視点を与えてもよいでしょう。数図ブロックをもとに計算の仕方を考える時に、思考の方向性を与えることができます。
数図ブロックを使って考えたやり方を、指名して前で発表させます。最初の子どもが10から6を取りました。減減法です。授業者は減減法が出てくることを予想していなかったようです。6の説明をせずに、3から順番に取っていってと説明をしました。中途半端に説明するよりは、同じように考えた人がいるかどうかだけ確認して、説明は後に回した方がよかったでしょう。
次の子どもは、10から9を取って残った1と3を足します。次に指名した子どもは、10から1を取って3に足しました。子どもからすごいと拍手が起こりました。ここは、しっかり押さえたいところです。どこがすごいかを子どもに問いかけ、1はどこからでてきたかを確認して、「10は9と1」と補数につながる言葉を出させたいところでした。この考え方を全員に納得させることが必要だったと思います。
せっかく子どもから出てきた考えですが、操作をさせて確認はしませんでした。ここまで数図ブロックで考えてきたのですから、それぞれの考え方を実際に操作することで理解させることが必要だと思います。
10から9を「取って」1、1と3を足して4という操作を式に戻って説明する時には、10から9を「引いて」となっていました。おそらく授業者は意識せずに言葉を置き換えてしまっていたように思います。また、10をさくらんぼ図で1と9に分けてから計算する練習をいきなりするのですが、10から1を引くのと、10を9と1に分けることの間にはギャップがあります。大人から見るとギャップにも思えないことを、子どもに寄り添い、子ども目線でクリアしようとすることが大切です。

5年生の国語は、論語でした。授業者は日ごろから子どもをしっかりと受け止めているようです。子どもたちはよい表情で授業に参加していました。ただ気になったのが、子どもが発言している友だちの方を見ないことです。子どもの言葉をつなぐことを意識して、聞く姿勢をつくることが大切です。
教科書では書き下し文しか扱いませんが、授業者は白文を用意しました。ディスプレイに映し出します。漢字ばかりであることを押さえて、漢字について学習したことを確認します。「漢字について前に勉強したね」という授業者の言葉に「あー」と反応する子どもがいました。しかし、授業者は自分で説明をします。せっかくの反応ですから、これを活かしたいところでした。
続いて、ワークシートで書き下し文を与えて音読します。せっかく白文を提示したのですから、白文と書き下し文の関係を説明したいところです。「もともとは、中国語でそのまま読むもの」「日本には中国から漢字が伝わっていたので、漢字の意味と読みはわかる」「中国の言葉を日本語で読めるようにして考えられたのが書き下し文」「これによって、当時の人は中国語を読めるようになった」。こういったことを押さえておきたいところです。
子どもたちに音読をさせますが、目標がはっきりしていません。すらすらと読むのか、言葉の区切りを意識するのかといったことを明確にするとよいでしょう。
続いて、国語辞典を与えて文の内容(意味)を考えさせます。目指すところが、書き下し文から言っていることをなんとなく理解することなのか、書かれていることを理解してその上で解釈することなのか、はっきりしていません。白文を使ったのであれば、漢字事典を使ってもよかったかもしれません。白文の漢字の中で、書き下し文でそのまま使われているものとそうでないものがあることに気づかせても面白いかもしれません。どうあるべきということではなく、何をさせたいかです。
現代語の辞典なので出てこない言葉もあります。「ず」といった古語の助動詞についてはある程度情報を与えるか、白文の漢字「不」の意味から想像させるといったことも必要かもしれません。
子どもに発表させますが、どこでそう思ったのか、調べたのか、想像したのかといった手段を共有しません。せっかく辞典という道具を与えたのですから、どう使ったかを共有したいところです。何人かの意見を発表させますが、同じように考えた人がいるのか、根拠を聞いて納得したのかといった、つなぐことをしません。最後に教科書の説明を読んでこの活動は終わりました。子どもたちは頑張って活動しましたが、その目標や評価ははっきりとされないままでした。
続いて音読の練習をさせますが、やはり目標や評価基準がはっきりしません。グループで発表し合う時になって評価カードが配られ、基準が示されました。これでは後出しじゃんけんです。子どもたちは、評価基準を意識せずに音読して、それ評価されるのであまり緊張しません。テンションが上がります。グループの代表を選んで発表させますが、評価を意識した音読でないので、だれが代表になるか選べません。代表の音読もあまり集中して聞いていませんでした。
1時間に内容を詰め込み過ぎたため、一つひとつの活動のねらいがぼやけたものになってしまいした。

6年生の英語は、カリキュラムがこの市の共通のものなので、授業者が工夫できることはないかという視点で見ました。6年生になるとある程度慣れているのか、子どもの参加の姿勢に差を感じます。ビデオを見ながら発音練習する場面などは、きちんと発音しない子どももいます。全員が口を開けるようにするためには、何度も繰り返すことが必要です。ビデオではなかなか難しいのですが、リモコンで一時停止させて、教師が再度言わせるといったことが必要です。
授業者はALTが主の場面でも、常に笑顔で子どもたちを見ていました、この学級の雰囲気がよい理由がよくわかります。
授業者は、外国語活動に対して前向きです。うまく授業に取り入れられるかわかりませんが、具体物で”situation”をつくって英語の意味を考えることや、逆に与えられた”situation”を英語に直すといったやり方があることを具体例で伝えました。また、単語の練習で絵と文字が一緒になっていることが気になることも伝えました。言葉を覚えこととスペルを覚えることは違います。「話す・聞く」と「読む・書く」の順番を意識することをお願いしました。

3人ともとても素直で、前向きでした。子どもたちの関係もよいようです。一つひとつの活動で子どもにどうあってほしいのか、何が目標なのかを意識して授業に臨むことで大きく進歩すると思います。これからが楽しみな若い先生方でした。