タブレットPCを活用した授業実践から学ぶ
- 公開日
- 2014/12/22
- 更新日
- 2014/12/22
仕事
愛される学校づくり研究会の例会がありました。今回は、「愛される学校づくりフォーラム 2015 in大阪」の内容の決定と、タブレットPCを活用した授業の報告でした。フォーラムの内容については、「「愛される学校づくりフォーラム2015 in大阪」の申込み開始」でお知らせしたとおりです。
最近、タブレットPC1人1台の環境での活用研究が多く行われています。特に協働学習での活用を視野に入れたものが増えているように思います。今回の会員の授業実践も、数学の図形領域における、情報の共有を意識したものでした。
四角形の各辺の中点を結んでできた図形について、どんなことが言えるかを考える授業でした。タブレットPCの活用はちょっと横に置いておいて、数学の授業という視点で見れば、子どもたちを揺さぶりながら四角形の定義を確認したり、「数学で成り立つというのはいつでも成り立つということで、1つでも反例があれば成り立つと言えない」という基本をしっかり押さえたりと、数学的なものの見方・考え方が意識された骨太なものでした。力のある授業者であるが故に、タブレットPCを活用することによって、使わない時と比べて授業が本当によくなったかどうかが問われます。
タブレットPC上で描いた図を自分のタブレットPCで全員分見られるというソフトの機能を使って授業を進めました。しかし、子どもたちが全員分の情報を処理する時間を授業時間内に取れるかどうか疑問に感じました。視点を持って見ることをしなければ、それ程早く処理できません。この機能を活かすための前提は何かがまだはっきりと見えていないのです。もちろんそれをするのが研究なのですが・・・。
別の授業で子どもから「○○さんの意見を見ろ」という言葉が出たそうです。なかなか素敵な言葉です。友だちの考えを共有することのよさが現れています。グループでまとめてしまえば、よい考えが埋もれてしまう可能性もあります。そういう点で、全員の考えを共有できるのは魅力的です。しかし、情報量が多すぎて一つひとつの考えの理解が薄まって、かえってよい考えに気づけない可能性もあります。ただ共有するだけで「○○さんの意見を見ろ」という声が引き出せるのかは疑問があります。そのために必要な条件がきっとあるはずです。この条件を考えてみたいと思いました。よい視点をいただきました。
授業の一部分を見ただけですので、正確なところは何とも言えませんが、今回の授業であれば「グループでたくさんの図を描かせて、共通していることを発表させる」ことをしたのち、「他のグループの意見が本当に成り立っているかどうか、成り立たない例があるか確かめるために、成り立ちそうもない図を描かせてみる」といった、意図的に図を描く活動をさせた方が面白かったように思います。これであれば、タブレットPCにこだわらず、紙と鉛筆、実物投影機でも十分にできます。今回の教材でタブレットPCを活用するのであれば、幾何ツールのように動的に形を変えることができるものを利用した方が、ICTのよさを活かせるように思いました。
また、今回は利用しませんでしたが、使用したソフトにはキーワードで分類するといった機能もあるようです。何となく面白そうな機能です。しかし、実際の授業を考えると、この機能を使ってキーワードで分類して整理する力をつけるのか、キーワードで分類することで問題解決する力をつけるのかといった、どのような力をつけようとするのかが問われます。
授業で子どもたちにつけたい力とソフトの関係が明確でなければいけません。どんな授業を想定しているのか興味がわきます。
タブレットPCの活用を否定するつもりも、今回の授業を否定するつもりもありません。いや、むしろ期待しているのです。授業実践を積み重ねて初めて見えてくるものがあります。今回利用したソフトの開発会社は、素晴らしい先生方に実践をお願いしているようです。教育ソフトの開発に長年携わっていた者としては、これらの実践を通じて、タブレットPCが子どもたちの学びにとってなくてはならない道具へと進化していくことを願っています。
今回のような学びの多い情報提供をもとに意見を交換ができるのも、この研究会の魅力の1つです。「愛される学校づくりフォーラム 2015 in大阪」のコンセプトは、愛される学校づくり研究会の公開研究会です。学びあえる研究会のよさをお伝えできればと思っています。