日記

授業の工夫と子どもたちのよい姿にたくさん触れる

公開日
2015/06/04
更新日
2015/06/04

仕事

私立の中高等学校で授業アドバイスを行ってきました。この日は、先生方と一緒に授業を見ることが中心でした。授業規律と子どもたちの学びの様子を観点として、授業を見ました。

昨年の同時期と比べて、子どもたちの授業に対する姿勢がよいように感じました。授業に集中している姿をたくさん見ることができました。その反面、先生が一方的に説明している授業では、子どもの姿がバラバラで集中力を欠く場面も目に付きました。この学校の生徒は、先生方がテンションをあまり上げずに、笑顔で子どもたちとキャッチボールをするだけで、とてもよい姿を見せてくれます。
授業規律に関して言えば、授業者が説明している時に顔を上げていない子どもが気になります。この学校の子どもたちに何を求めているかをきちんと伝えれば応えてくれます。顔を上げることを求めている先生の授業では全員が先生を見て授業に参加しています。子どもたちは、板書を写すことと説明を聞くことが同時進行してしまうと、どうしても写すことを優先してしまいます。このことを意識するとよいでしょう。
この日見た授業で、よい場面、印象に残る場面がたくさんありました。授業改善を意識している先生が増えているということだと思います。子どもたちのよい姿が増えているということは、先生方が子どもたちのよさを引き出しているということです。うれしいことです。

若手の先生の高校2年生の古典の授業では、子どもたちがとても集中していました。印象的だったのは、先生の声が以前と比べて小さくなっていたことです。子どもたちが集中しているので、大きな声を出す必要がないのです。また、作業をしていても先生が説明を始めると、特に指示をしなくてもすぐに集中して聞いていました。子どもたちの半分は、この先生が昨年度から教えています。その時から、よい授業規律が確立されていたのでしょう。

ベテランの先生の高校1年生の世界史の授業は、グループで課題を考えるものでした。授業の後半で、2つ目の課題に取り組む場面を見ました。根拠とすべきものをきちんと指示して取り組ませます。しかし、子どもたちには難しかったのか、動きが止まります。この時、授業者は作業をいったん止めました。よい判断です。時間がないこともあったのでしょう、授業者が根拠なる部分の解説をしました。しかし、中には話し合いが進んでいるグループもありました。ここは子どもたちの言葉で進めたかったところです。子どもたちの困っていることを共有し、そのグループにどこをもとにして考えたかをたずねるのです。教師が言ったことは、子どもたちは無批判で受け入れます。それに対して友だちの意見は、本当かどうかを考えながら聞こうとします。学びが深くなるのです。
この学校の社会科は、一方的に知識を教える授業から知識をもとに考える授業へと脱皮を図っています。まだまだ手探りのところがありますが、この学校の子どもたち合った授業スタイルができてくると思います。

高校1年生の数学の学び直しの授業は、子どもたちのわかりたいという気持ちを感じるものでした。苦手だった子どもももう一度理解する機会を得てやる気を出しているのです。ここで、子どもたちに互いに聞き合う習慣をつけるためにも、問題の解答を隣同士やまわりの子どもと確認する時間を取るとよいでしょう。人間関係は悪くないので、きっと自分たちで理解しできるようになると思います。

高校2年生の数学の授業は、解答を教えていると感じました。この先生の授業だけでなく、このように感じる数学の授業が多いように思います。板書で言えば、解答だけが書かれ、なぜこのように変形しようとするのかといった方向性や、行間を埋めるようなものが書かれていないのです。問題を解決するために何を考えればいいのか、どのように道筋を見つけるのかといったことを、子どもたちと一緒に考えることが大切です。工学的な、これを求めるためにはどんな公式を使うといった発想ではなく、数学的な見方・考え方を大事にしてほしいと思います。

選択の生物の授業では、面白い場面を見ることができました。スクリーンに資料を映すと子どもたちの集中力が一時的に高くなります。しかし、その後授業者の説明が続くとまた集中力が落ちてしまいます。ICT機器のよさと限界を感じる場面でした。子どもたちが集中した後、どう彼らが参加する場面をつくるかがポイントです。資料をもとに、子どもたちに課題を見つけさせることを意識すると、ICT機器のよさが活かせると思います。

若手の先生の高校1年生と2年生の英語の授業ではよい場面をたくさん見ることができました。
1年生は音読を全員の前で発表することが最終課題のようでした。授業者に続いて繰り返す場面で、教科書に書き込んでいる子どもの姿が見られました。全体で発表するというゴールが彼らによい意味でプレッシャーをかけていたようです。しかし、中には途中から全く参加できずに手遊びをしている子どももいます。ところが、グループでの練習になると急に表情が変わります。すぐに隣の子どもに話しかけてうれしそうに教えてもらっています。子どもたちは、抵抗なく聞き合うことができています。英語の授業はそういうもだと思っているのでしょう。先ほどの子どもはわからないので早く友だちに聞ける場面がこないかと待っていたのです。教師が教えなければいけないとう思い込みを捨てるとこういう場面に出会うことができます。
2年生の英語は少人数のリスニングの授業でした。この学校ではGDMを取り入れ始めましたが、その発想を他の場面でも活かそうとしていました。
リスニングで出てくる表現を最初に練習してから、写真を使った紙芝居形式のショートストーリーを読みます。子どもたちは真剣に”situation”を理解しようと聞いています。子どもたちがわからない言葉でも、写真からわかるように工夫をしています。授業者は一切日本語の説明をせずに、何回か繰り返しました。子どもたちを見ていると、理解できたときは表情に表れます。笑顔がもれるのです。各場面の説明を子どもたちに求めますが、しっかりと理解していました。まず文章を読んでそこで使われている表現を抜き出して学習するのではなく、表現をまず学習してそれを活用して文章を理解します。学んだことを使って、英語が理解できる場面をつくるのです。GDMの発想を上手く使っていました。
続いて、先ほど聞いた英語を子どもたちに言わせます。全体での確認の後、個別に指名します。中には答えられない子どももいますが、その時授業者は教えません。全体で言わせてから再度その子どもに言わせるのです。友だちの声を聞いて自力で言うことで、できたという気持ちにさせています。子どもに自己有用感を上手く与えていました。
一度全体で文章を読んですぐにペアで音読をさせましたが、耳でしっかり聞いて、何も見ずに話す練習をした後なので、しっかりと読むことが出きていました。読み書きをしてから話す聞くをする授業に出会いますが、言葉の習得として考えるとどうしても逆に思えます。この授業を見て、そのことを再確認しました。
この先生に限らず、授業を工夫している英語科の先生がたくさんいます。こういった工夫を共有化して、この学校のスタイルを確立してほしいと思います。

高校1年生の理科「科学と人間生活」は、その学級の担任の授業でした。
子どもたちの関係がよいことが子どもの表情でわかります。どの子どもも先生の顔を見て話を聞いています。授業者の笑顔も素敵です。昨年は余裕がなく表情がかたいことが多かったのですが、今年は違っています。意識しているのでしょう。このコースの子どもたちの授業での様子は、昨年まではあまりよい状態でないことが多かったのですが、今年は違います。この授業に限らず、よい表情、わかりたいという意欲、聞こう解こうという集中力を目にする場面がたくさんありました。とても素晴らしいことです。

先ほどと同じコースの2年生の生物の授業は若手の先生でした。
作業の時間だったのでしょうか、一部の子どもの集中力が切れています。しかし、授業者が話を始めると、子どもたちの顔が上がります。授業者は子どもたちを笑顔で見ようとしています。板書をしながら説明しますが、要所要所できちんと子どもたちを見ていました。この後の問題演習は、子どもたちにとっては簡単でないように見えたのですが意欲的に取り組んでいました。机間指導しながら、できている子どもをやや大げさにほめます。傍から見ているとぎこちないのですが、子どもたちはうれしそうな表情を見せてくれます。ぎこちないのは意識して行っているということです。授業を改善しようとして取り組んでいることが、子どもたちの様子に表れているように思いました。これから授業者も子どもたちもきっと伸びていくことと思います。

高校2年生の化学では、子どもたちがワークシートに一生懸命に取り組んでいました。何人かを指名して板書させるのですが、ちょっとムダな時間に思えました。目につく限り子どもたちは自力で埋めることができています。板書の間、時間を持て余している子どももいます。板書をせずに隣同士で確認するだけで十分でしょう。不安なら、その後テンポよく指名して確認していけばいいのです。子どもたちは集中して授業に参加しています。子どもたちを信じてもう一歩上を目指してほしいと思います。

社会の若手の先生が、授業後に話を聞きに来てくれました。この日見た日本史の授業では、まだ説明が多くなっていましたが、授業改善への意欲の強さを感じさせてくれます。現代社会?の授業での工夫も話してくれました。工夫を積み重ねていくことで自分の授業スタイルが生まれてきます。こういった動きが個人から教科、教科から学校へと広げて行くことを期待します。

中学校の先生と発達障害のグレーゾーンの子どもへの対応について、実際に授業を見ながら相談しました。この時間はそれほど目立った行動はありませんでしたが、すぐにしゃべる、まわりにちょっかいをかけるという子どものようです。他の子どものことを考えて無視をすることも大切ですが、無視されると眠ってしまうということです。同行した先生からは、眠っていた方がまわりの迷惑にならないからいいという意見や、それでも何とか参加させたいという意見もでてきます。全体も大切ですし、個も大切です。どちらが正解というものではありません。こういった考えを互いに伝え合うことが大切です。こういったことを学年全体で話し合う雰囲気を大切にしてほしいと思います。私からは、あまりかかわりすぎないこと、よい行動を取れることもあるはずだからそれを認めてよい行動を増やすペアレントトレーニングの発想をお話ししました。その子どもが活躍できるような役割を意図的に与えることも一つの方法です。焦らずに、まずは学級全体を大切にしながら対応していくことが必要でしょう。

同行した先生からは、この学校のスタイル、メソッドのようなものがつくれればという声が上がりました。個や教科の取り組みでよいもの、よい場面を見ることができたからでしょう。私も全く同感です。この学校の子どもたちを伸ばす、独自のメソッドをきっとつくりだすことができると思います。そのお手伝いをできることをとてもうれしく思います。