日記

子どもが落ち着いてくると課題が見えてくる(長文)

公開日
2015/06/08
更新日
2015/06/08

仕事

小学校で授業アドバイスを行ってきました。1学年2学級ほどで、小中連携の一環で授業規律を中学校と統一している学校です。下駄箱の靴をきちんとそろえるといったことをきちんとやれている学校でした。

1年生の算数は1桁の足し算の練習でした。
音声計算練習をやって、どれだけできたかを聞いています。子どもたちはうれしそうに答えています。絶対評価だけでなく、「前回よりもたくさんできた人?」と伸びを聞くことや、ペアの子どもにいくつできたかの挙手をさせるといった工夫をするとよいでしょう。
落ち着かない子どもが一人います。授業者はどうしてもその気どもに気を取られてしまいます。全員が指示に従うまで待つのですが、指示に従えている子どもを評価しません。これでは待たされている子どもは嫌になります。できている子どもを素早くほめ、全員が指示に従えたら、「待っててくれてありがとう」と全体をほめることが必要です。
しばらく教科書を使わないのに、教科書を広げさせます。使わないもののために時間を使うことはムダです。使う直前に指示をすることを心がけましょう。
計算カードを使って練習する場面で、先ほどの子どもを個別に指導しているために全体が見えていません。やり終わった子どもは、どうすればいいのか指示を待っています。中にはごそごそしだす子どももいます。特定の子どもにかかわりすぎて全体が見えなくなってはいけません。「計算カードで練習しなさい」という指示ではなく、「何回できるか?」という終わりのない目標を与えるか、できた後の指示を最初にしておくことが必要です。
指示をした後、「この列早いね」と言うだけで、子どもたちの動きがすぐによくなります。「この列も早い」と言うと、素早く指示が通ります。授業者は指示を徹底させる力があります。子どもたちとの関係も悪くはありません。ただ、気になる子どもにかかわりすぎて余裕を失くしているのです。

2年生の算数は足し算の筆算でした。数え棒を使って計算の仕方を考えます。
子どもに問いかけした時に、何人かの子どもが挙手しました。その時、ある子どもが答をつぶやき、授業者はその言葉を受けて進めました。挙手している子どもがいるのにつぶやきを拾うと挙手している子どもは納得しません。どうしてもその子どもを活躍させたいのであれば、全体に対してもう一度言わせ、挙手した子どもに同じ意見かを確認します。同じであれば、「すぐに手が挙がってすごいね」というようにほめることが必要です。
説明が長かったのか、一度全員同じように置けているはずの数え棒の状態がバラバラです。集中が切れて数え棒で遊んでいたようです。関連のある活動は、あまり間をおかないようにすることも大切です。
1位の数の計算の説明で、最初に指名した子どもが「6−4で答が2」として数え棒を2本置きました。子どもたちから、「賛成」と声があがります。説明を見ていない子どもも声を出しています。ちょっと気になる状況です。授業者は「どこが、賛成?」と子どもたちに問い返します。発言に責任を求めるよい対応なのですが、問いかけただけで、実際には聞かなかったことが残念です。次に指名した子どもは、数え棒を使って引き算して説明します。子どもたちはやはり「賛成」と答えます。授業者は「どちらも賛成と言ってくれたけど、やり方が違う。違いに気づけた?」と返し、数え棒を使うことを押さえて、確認します。「6−4」で説明した子どもの表情が悪くなりました。実際にこの後の筆算では、数え棒を使わずに計算します。数え棒は繰り下がりのための布石です。ここでは、数え棒を使って説明したけれど、「6−4」を計算していることと同じであることを押さえて、1の位から引き算をして、次に10の位を引き算すればよいことを全体で確認すれば、双方とも納得できたと思います。次の時間は、いきなり数え棒ではなく、「1位の数が引けない」「困った」「数え棒で考えようか?」という展開にすればいいのです。
続いて、計算の練習をしますが、授業者は教科書の問題を筆算の形で提示します。教科書は筆算の形で問題を提示していません。位をそろえて書くことも練習させたいからです。一つひとつのステップを大切にしてほしいと思います。
10の位を引くと0になる問題があります。答を「05」と書く子どもがいます。授業者は「05という数字はない」と説明します。これはちょっと問題です。しかも、この後、1桁の数を引く問題があります。10の位を引くのに、10の位は0だと説明しています。子どもは混乱する可能性があります。「05」と書かないのは10進表記のルールです。一番大きい位の0は書かないというルールで説明すべきでしょう。こうすれば、逆に1桁の数を引く時も、「書かないルールだけど0だね」という説明が可能です。もちろん、「10の固まりはいくつ?」と数え棒の考えに戻って説明してもいいですが・・・。

3年生の国語は説明文の授業でした。
授業者がめあてを板書します。めあてを写す子どもと写さない子どもがいます。書き終った後、時間制限をして書き写させます。板書中に写していた子どもは、すぐに終わって集中力を失くします。それならば、あらかじめ紙に書いたものを貼って、写させれば時間を節約できます。また、時間制限であれば、その間に書ければいいので素早く書こうとはしません。「何秒で書けるかな?」とできるだけ早く書くことを求めることが必要です(もちろん雑に書いては困りますが・・・)。
一部の子どもがつぶやくと、それを拾って授業が進んでいきます。つぶやきを教師だけが受け止めるのではなく、全体で共有することを忘れないでほしいと思います。
この日のめあては、「こまの種類とその楽しさを探しながら読む」です。最初にグループで一文ごと順番に音読していきます。この音読の「読む」は、課題の「探しながら読む」ことなのかがはっきりしません。子どもたちはわかっているのかもしれませんが、音読は滑らかに読むことが目的とだったようです。授業者は速く読めたかどうかを評価します。課題に直接つながる活動ではないので、課題を提示する前に行うべきでしょう。グループでの音読が終わったあとは、個人で音読するというルールがあるようでした。子どもたちはスムーズに次の活動に移っていました。こういうルールをつくっておくことは、子どもたちの集中を切らさないために重要です。
ワークシートの説明を一方的にしますが、子どもたちの集中力は続きません。子どもたちに確認をしたり問いかけたりと、双方向の活動にすることが必要です。
第2段落について作業をおこなったあと、まわりと確認します。ワークシートを見せあっている子どもが多かったのが残念です。相手を見て聞くこと、話すことで確認したいところです。その後、答を聞くのですが、せっかくまわりと確認したのですから、答が同じだったか、違っているところはないかから進めるとよいでしょう。友だちの方に顔が向いていない、聞いていない子どもがいました。授業者はそのことを気にしていないようでした。友だちの発言を聞くことを求めてほしいと思います。

4年生の国語は、同音異義語の学習でした。
子どもたちに題材となる詩を音読させます。子どもたちは一生懸命に声を出していますが、何を目標としているのかよくわかりません。一つひとつの活動の目標をはっきりさせることが大切です。
授業者は昨年まで1、2年生しか担当したことがありません。初めての4年生で勝手がわからなくて困っているようでした。今までは、子どもたちをほめて授業規律をつくることができていたのですが、上手くいかないため、指示に従えない子どもを注意してしまいます。授業者から笑顔を少なくなっています。低学年では「みんな」でほめても自分のことを思いますが、自我が発達してくる4年生くらいになるとそうはいきません。必ず固有名詞でほめることが必要です。固有名詞で具体的にほめ、それを聞いてまねをした子どもも同様にほめることで、授業規律がつくられていきます。
また、ワークシートと辞書を使う活動では、ワークシートと辞書を配ってから説明を始めました。子どもたちはどうしても手元に気を取られて集中できません。こういったことが、授業規律を崩しています。まず説明をして、配られたらすぐに作業に取りかかれるようにすることが大切です。実物を見せる必要があるのなら、実物投影機や拡大コピーで、それが難しければワークシートの項目を板書して説明するようにします。

5年生の社会は、国土の気候の特色でした。
「流氷」「樹氷」「桜」「海開き」の写真を上から順番に貼りながら、何月の写真かを問います。写真のどこでそう思ったか指させます。根拠を大切にしていることがわかります。授業者は常に柔らかい笑顔で子どもたちと接しています。上手く答えられなかった子どもがいたのですが、笑顔で席に戻ります。教室全体に受容的な雰囲気があるので、失敗しても恥ずかしくないのです。子どもたちの手がよく上がることからもそのことがわかります。実はどれも3月の写真ですが、子どもたちが真剣に考えたのでそのことを聞いて、大きくゆさぶられていました。ベタな展開ですが、子どもたちとの関係のよさ、教室の雰囲気づくりが上手くできていることを感じました。地図を4枚の写真の間に貼ると、ちょうどその土地の横に写真が来ます。ちょっとしたことですが、よく考えていることがわかります。
「課題」と書いたカードを黒板に貼ると、子どもたちはさっとノートを開きます。授業におけるルールがしっかりと定着していました。
この日の課題は、気候について考えるのですが、「気候」という用語を子どもたちはまだ知りません。教科書の記述で確認しますが、どうしても抽象的です。「寒い」「温かい」「じめじめする」といった言葉を子どもたちがから引き出して、それと教科書の説明をつなぐとよかったでしょう。具象と抽象を行き来させることを大切にしてほしいと思います。
写真を見て気づいたことを書かせます。子どもたちの手の動きが速いことが印象的です。「気づくこと」でこれだけ書けるのですから、日ごろから鍛えられているのでしょう。指示がよくわからずに動いていない子どもに隣の子どもが教科書の写真を指して一言説明します。子ども同士の関係もよいのでしょう。
授業者は机間指導しながら、「同じ3月なのに一番上は・・・と書いている人がいる」と声に出します。教師が全体に対して言ったことを、子どもは無批判で受け入れます。言う通りにしなさいと指示されていると思います。これでは考えることをしません。この場合は机間指導しながら、ちょっと大きな声で「同じ3月なのに一番上は・・・と書いている。いいね」と個人をほめるとよいでしょう。子どもはその声を聞いて、参考にするかどうか自分で判断します。この違いは大きいのです。
グループで話し合うように指示しますが、ここは聞き合うとしたいところです。子どもたちがノートを見ながら話しているのが残念でした。困ったらノートを見ていいが、できるだけ友だちの顔を見て話すように指示したいところでした。

もう一人の5年生の担任の授業は、算数の小数÷小数の筆算の場面でした。
2.4÷0.08=(2.4×100)÷(0.08×100)として計算させます。すぐにできた子どもはすることがなく、じっとしています。できた子どもへの指示が必要です。
板書の100は色を変えて目立たせていますが、なぜ100なのかの説明がどこにもありません。ここの部分をしっかりと共有することが必要です。また、被除数、除数に同じ数を書けても答えは変わらないという割り算の性質を使って計算できるという説明を授業者がするのですが、既に学習したことなので、子どもの言葉で確認したいところでした。
「小数÷小数の計算は割られる数と割る数に同じ数を書けても変わらない」とまとめますが、日本語が変です。教科書は「・・・変わらない性質を使って・・・」となっています。ここを省略してはいけません。「この性質を使って、どうすればよかった?」と問いかけて、「両方を整数にする」という言葉を引き出したいところです。
この日の主課題は、小数÷小数の筆算です。4.65÷15ならできたと言って、4.65÷1.5を自力解決させます。子どもたちが見通しを持てていないままに進めたので、0,031という答や、0.31という答がほとんどでした。正解の子どもを指名しますが、小数点を1つ移動させて46.5÷15という説明です。これは形式的な手順であって理由の説明ではありません。両方とも10倍しますが、なぜ10倍かは納得させていません。一人説明させて終わりです。子どもたちがぼろぼろなのを知っていて、これで終わりです。筆算でなければ100倍にすることになりますが、それに対して、算数は「速く、正確」だから10倍という説明をしました。全く根拠がわかりません。筆算でも、整数÷整数の方が「速く、正確」と思う子どももいるはずです。
ここでは、まず4.65÷15と4.65÷1.5の違いを子どもたちに問いかけ、除数が整数なら筆算できることを確認して、除数の1.5をどうすれば整数にできるかを問いかけることで見通しを持たせるとよいでしょう。先ほどの「性質を使って」という教科書の表現の意味がわかると思います。いつも両方を整数にするのではなく、この性質を使って一方を整数にすることもあるからです。教科書をしっかり理解すること、子どもたちがわかるためにはどういうステップが必要なのかをよく考えることが大切です。手順を安直に教えることのないようにしてほしいと思います。

6年生の国語は説明文の授業でした。実時間と体感時間の差についての文章です。
子どもたちに目をつぶらせて30秒経ったと思ったら目を開けさせます。実際の時間とのずれ知ります。文中の実験を体験することは悪いことではないのですが、何度もやることではありません。何かを考えることではないのでどんどんテンションが上がります。1度体験させることで十分でしょう。朝昼晩に行った実験をもとに、体感時間の速い遅いがどうなっているのかをグループで根拠を持って考えさせることがこの日の課題でした。筆者は文中で、はっきりと結論を述べています。その根拠は実験の結果のグラフです。ここで混乱が起きました。本文での筆者の結論を根拠に考えたグループと、実験の結果をもとに自分で考えたグループで結論が変わったのです。30秒経ったのに15秒しか経っていないと感じたのは、実際の時間の流れを遅いと感じたのか速いと感じたのかを間違えるグループがたくさんあったのです。しかし、互いに話し合おうにも、根拠としたところが異なるので議論はかみ合いません。結局、実験の結果について授業者が一生懸命に解説して納得させようとする授業になってしまいました。
ここは、筆者がどう言っているのかをまず本文から確認する必要があります。筆者の結論を全員で確認した後、筆者が根拠にしていることは何かを押さえます。その上で必要と考えるのであれば、実験からどうしてこの結論が出るのかを考えさせるのです。論点を明確にすることが大切でした。

全体に対して共通の課題として、

・子どもたち一人ひとりをしっかりと見ること
・「発言者を見る」といった授業規律を形式的なものではなく、反応しながらちゃんと聞くという実質を伴うものにすること
・活動の目標、評価基準を子どもにわかる形で示し、評価の場面を必ずつくること
・グループ活動の後の発表は、ただ順番に発表するのではなく、同じ考えをつなぎ、違う考えの物には納得したかを問いかけ、焦点化することで子どもたちの考えを深めることを目標としてほしいこと
・つぶやきを拾うのはよいが、全体に対して再度発表させ共有してほしいこと

などをお願いしました。

子どもたちが落ち着いてきているので、授業を見合って互いのよいところを吸収し、もう一段階上を目指してほしいと思います。日を置かずにまた訪問しますが、先生方が変わろうとしている姿を見ることができればと期待しています。