課題が多ければ学びも多い
- 公開日
- 2015/06/17
- 更新日
- 2015/06/17
仕事
昨日の日記の続きです。
数学の授業研究は、3年生の平方根の導入の場面でした。
「方眼紙にできるだけたくさんの正方形を描こう」というのが最初の課題です。この表現では、同じ大きさの正方形を方眼紙にたくさん描く子どもが出てきそうです。案の定、方眼を1つ1つ囲んで同じ大きさの正方形をいくつも描く子どもが出てきました。「異なった面積」や「異なった大きさ」という言葉が必要だったでしょう。
子どもを指名して発表させますが、この時どの大きさの正方形を描かせるかが問題です。授業者は「お気に入り」を描くように指示します。指示された方は困ります。客観的な基準ではないからです。また、同じ正方形を「描けた人?」と全体に聞きます。これも要注意の表現です。この正方形を描けなければいけないというニュアンスになるからです。子どもをつなぐというのなら「描いた人?」でいいのです。また、「距離が同じ正方形」といった表現もしました。距離を使うのなら、「隣り合う頂点の距離」でしょうし、数学の授業としては、「辺の長さ」が同じと言うべきでしょう。面積をたずねるのに、「何平方かわかる人?」と言ったりもします。こういった言葉の使い方が雑なことが気になります。
斜めに描いた正方形の面積を求めます。2cm2や8cm2となることを確認します。指名された子どもが説明すると拍手が起きますが、形式的になっているように思います。2つの目の説明の時の拍手が先ほどより弱いことが気になります。理解できなかった子どもが多いのでしょう。拍手に紛れて、理解できなかった子どもが置き去りにされていきます。きちんと理解できたかを確認することが必要です。
正方形の1辺の長さを聞いていきます。面積を言って1辺の長さを答えさせますが、面積の単位をつけたりつけなかったりします。こういったことにも気をつけてほしいと思います。
面積が2cm2の正方形の1辺の長さを聞いた時に「1.4」という声が聞こえました。これをひろうと面白い展開になると思ったのですが、授業者は無視して、この日のめあて「2乗するとaになる数を調べよう」を提示します。子どもたちはまだ、2乗して2になる数について何も考えていません。子どもが疑問を持っていないのに、めあてが出てきました。この時点でこれまでやってきた作業はムダになってしまいます。「1.4」を拾って、「ほんとう?」と揺さぶって、実際に計算させればよかったのです。「2にならないね」「面積が2の正方形の1辺の長さはいくつなの?」と畳みかけて、まず2の平方根を徹底して考えさせればよかったのです。
授業者は、2乗して2になる数を√2とかくと定義しました。これでは定義になっていません。こういった記号は一意でなければいけません。平方根を定義せずに√の定義はできません。まずは、√が有限な小数で書けないことを簡単に押さえて(有限であれば、最後の桁は1〜9のどれかだが、2乗しても0にならないから、整数にはならない)、そんな数が「ある」の「ない」のと揺さぶればよいのです。ここで、正方形を描いたことが効いてきます。正方形の1辺の長さは「ある」が上手く表せないことを押さえるのです。そこで、平方根の定義にもっていくのです。
授業者は、2の平方根が√2と−√2と説明します。数学的にはもうむちゃくちゃです。√2が正であることはどこでも押さえられていません。というか2の平方根の内、正の方を√2と書くのですから、授業者の進めかたでは押さえようがありません。平方根と記号√の関係が曖昧なまま授業は進みました。
教科書の問を練習します。25といった平方数や、小数、分数の平方根を言わせますが、2乗して確認することをしません。2乗すると元の数になることをしっかりと押さえておかないといけません。続く平方根を√で表わす練習でも、「2乗すると?」と(−√7)2と書いて計算することを確認しませんでした。子どもたちのつまずくところを理解できていないと感じました。
授業検討会では、私が指摘するまでもなく、参加者からこの授業の課題について挙がってきました。一言で言えば教材研究が甘いということです。学級経営や部活動ではしっかりと子どもたちとの関係がつくれています。授業も、子どもたちは真剣に参加してくれます。だからこそ、その中身が問われることになります。採用5年目で、いろいろなことがこなせるようになりました。毎日仕事に追われ遅くまで働いています。しかし、その過程で授業の質を高めることへのエネルギーが薄れてしまっているのではないかと心配します。教師にとって授業が基本です。足元を見つめ直すよい機会だと思います。今後どのように変わっていくか、とても楽しみです。
2つ目の国語の授業研究は、2年生の短歌の学習で、自分たちのつくった短歌を鑑賞し合う場面でした。
授業者は一つひとつの活動の節目をつくらずに次の活動に移るため、子どもたちが集中しない場面が目につきます。授業者の問いに子どもたち反応し、それを受けて進んでいきますが、よく見ると一部の子どものつぶやきで授業が進んでいきます。復習の場面で早く進みたかったのでしょうが、ちょっと焦りすぎだと思います。全体で共有することが必要だったと思います。
この授業者の授業では子どもたちのテンションが高くなりやすい傾向がありますが、この日は活動を止めてコントロールしようとしている場面がいくつかありました。意識をしているのだと思います。教師が求めればそれに応えることのできる子どもたちです。今子どもたちのどのような姿が見たいかを常に意識してほしいと思います。
ワークシートを配って、この日の活動の説明をします。授業者は一連の動きを一方的に説明します。活動のポイントも一緒に説明されるので、子どもたちは混乱します。ステップに分け、子どもに確認し、必要に応じて板書することもしてほしいと思います。「わかった?」と聞きますが、子どもの口で説明させることはしません。いろいろな場面でもっと子どもと言葉のやり取りをしてほしいと思います。実際に活動が始まってから、子どもたちに質問され、個別に対応することになりました。
グループでの鑑賞の活動は、読み取った情景や心情をワークシートに記入し、工夫された表現や技法をチェックするというものです。短歌をつくる時に、上の句に情景、下の句に心情を表わすという条件をつけていたことを最初に確認しました。学習した技法を使うということも条件だったようですが、そのことは押さえていません。子どもたちのワークシートに書かれたものは、読み取りの根拠がはっきりしていないものが多いようでした。ここでは、技法とその効果を復習して、実際に使われた技法や表現がどのような効果があったかを、読み取りと関連づけて書かせるようにするとよかったと思います。
また、創作の段階で意図的に技法や表現を使って伝えようとしていないので、根拠を意識できなかったのかも知れません。伝えたい気持ちを一番簡単に伝えるには、直接書くことですが、それでは短歌になりません。単に心情を読み取ることを課題にすると、視点がずれてしまう可能性があります。心情は直接表わさないということも条件としておくとよかったでしょう。創作の段階で具体的な例を挙げてもよいかもしれません。「楽しい」を伝えるには「笑顔」、「笑顔」を伝えるには「口が開いている」、「口が開いている」ことを伝えるのに「白い歯が見える」ことを伝える。こういったやりとりをしながらみんなで短歌を一つつくってみてもよかったかもしれません。
一通り鑑賞し合ったあと、自分の伝えたかったことを伝え、よかったところやアドバイスを聞き合います。しかし、ただ「これが伝えたかった」と言うだけでは、「伝わった」「伝わらなかった」で終わってしまします。よかったところも、伝わったかどうかという点とは関係なしに、感想で終わっていました。根拠のないことを言い合うので、テンションが上がってしまいます。早く終わったグループは次の指示がないため、テンションが上がったままざわつき始めます。子どもたちの表情がよいだけに残念に思いました。
今回の一連の活動で、国語としてどんな力をつけたいのかがよくわかりませんでした。「根拠を持って」伝え合うことがなかったために、ただ活動して終わってしまったように感じました。
授業者は、子どもたちの状況をよく理解していました。検討会では、今回の授業の問題点をきちんと把握していました。そうであれば、そのことを意識して授業を改善していくだけです。今回の授業では、子どもたちの顔を上げさせようとする場面が以前より増えていたように感じます。こういったことをより意識するようになったということです。
授業検討は司会のベテランの先生がていねいに話題を焦点化し、参加者の共通の課題として誰にとってもよい学びのできるものとしてくださいました。さすがでした。
この日は要請訪問で教科指導員の先生も参加されていたのですが、上から目線ではなく、参加者が誰しも納得できるわかりやすい指導をされました。まだ教科指導員になって日が浅いということでしたが、謙虚に自分もこの機会に一緒に学ぼうという姿勢を感じました。これから力をつけていかれることと思います。私もよい学びをさせていただきました。
今回の2つの授業研究は、授業そのものには課題が多かったように思いますが、だからこそ互いに多くのことを学ぶことができたと思います。授業者も事実を素直に受け止め謙虚に自分の授業を見つめ直してくれたように思います。事前に時間をかけ、苦労して準備をしてきたのですから、素直に受け止めることができなくてもおかしくありません。それでも素直に受け止められるということは、伸びる可能性が大きいということです。
今後の進歩が楽しみになりました。