志水廣先生、大羽沢子先生から学ぶ
- 公開日
- 2015/06/22
- 更新日
- 2015/06/22
独り言
今年度第2回の教師力アップセミナーに参加してきました。「算数授業のユニバーサルデザイン−模擬授業を通して学ぶ−」と題した、愛知教育大学名誉教授の志水廣先生と鳥取大学医学部エコチル調査鳥取ユニットセンターの大羽沢子先生の講演でした。お二人が執筆された「算数授業のユニバーサルデザイン 5つのルール・50のアイデア」は算数のみならず、どの教科の授業でも参考になると評判です。
冒頭で「授業のユニバーサルデザイン」とは「学力の優劣や発達障害の有無にかかわらず、全員の子どもが楽しく『わかる・できる』ように工夫・配慮された通常学級における授業デザイン」(授業のユニバーサルデザイン研究会)と定義されました。このことがすべてを物語っていると思います。ユニバーサルデザインだからといって特別なことではないのです。私たちが日ごろから目指すべき授業そのものです。
配られたユニバーサルデザインのチェックシートの項目を見ることで、授業で注意するべき視点が浮かび上がってきます。
1.机の配置、机の上の整理など子どもが集中しやすい環境ですか。
2.具体的なねらいが設定されていますか。
3.子どもは最後に何ができればよいか明確ですか。
4.ねらいを達成するのにふさわしい教材・教具ですか。
5.学習活動は、何をすればよいか分かりやすいものですか。
6.指示は短く具体的でしたか。
7.自力解決や適用問題の時に机間指導していますか。
8.机間指導での助言は、できるだけ端的にしていますか。
9.間違えているときの助言の仕方を考えていますか。
10.訂正ができたら即座にほめましたか。
11.子どもの発言を最後まで注意深く聞いていますか。
12.「どこがむずかしかったかな?」や、「何を見てそう考えたの?」など困っている子どもにたずねてみましたか。
13.分かりやすくはっきりとほめましたか。
14.キーワード(ねらいに迫る言葉)を子どもに言わせたり、板書したりしていますか。
15.初めて学ぶ算数用語などは、全員で繰り返し言ったり、確認したりしていますか。
16.不適切な行動に対して、どのように対応するかあらかじめ決めていますか。(子どもの考えは一旦受け止めてから次の指示をする、適切な方法を考えさせる、モデルを示す、ほめるタイミングなど)
どうでしょうか。ユニバーサルデザインということを意識していない方でも、授業中に気をつけていることばかりではないでしょうか。
7、8、9、10は机間指導に関することですが、私が見る限り、このことができていない方が多いように感じます。なんとなく子どもたちを眺めている机間散歩が目立ちます。最近は若い方に対して、まず全体をしっかり見て支援が必要な子どもを素早く見つけるように指導しています。その子どもに素早く対応をして、また全体を見るのです。本当はきちんとした机間指導ができることが理想ですが、力がないと机間指導をしている間に子どもの集中力が切れてしまうことが多いからです。全体の様子を見る力をつけてから、個別に机間指導をするようにお願いしています。
授業づくりのポイントとして、子どもに達成感・自己肯定感を持たせることを指摘されます。そのために、ほめる、認めることが必要です。何ができればいいかを明確にし、ちょっとでもできたら励ます、一緒に喜ぶ。こういったことちょっとしたコツを大切にしてほしいというメッセージは全くその通りだと思います。
この日は、志水先生が師範の模擬授業を行い、その解説を大羽先生が行いました。
場面ごとに、大羽先生が参加者とやりとりしながら解説をされるので(特に若い先生には)、具体的にどのようなことが大切なのかよくわかったと思います。
志水先生の授業は何度も見せていただいているのですが、今回その幅が広がっていると感じる場面がいくつかありました。
志水先生は「意味付け復唱法」が有名です。子どもの言葉を教師が復唱することで、子どもを受容し、子どものたちの発言をねらいに近づけていく方法です(詳しくは志水先生のご著書で)。この日はすぐに教師が復唱せずに他の子どもに復唱させてから、教師がもう一復唱するといったやり方も見せていただきました。子ども同士のつなぎをより意識したやり方です。バリエーションが増えています。
子どもの実態把握や答の確認については「○付け法」を提唱されていますが、この日はあえて隣同士で確認させる方法も使われました。志水先生ならばあっという間に○つけで実態把握ができるはずですが、こういったやり方もあることを(特に素早く確実な○つけができない方のために)教えてくださいました。自分流にこだわる方が多いのですが、相手のレベルに応じてそれ以外のやり方も紹介される姿勢に感心させられました。
この模擬授業のめあては「180°より大きい角を調べよう」でした。「調べよう」では、子どもにとっては具体性がないので、「測り方を考えよう」、もっと具体的に「測れるようになろう」の方がよかったのではないかと思いました。そのことを志水先生にお話ししたところ、「そうだなあ」と受け止めていただけました。言い訳もせずに素直に認められる姿勢は、さすがだと思いました。その姿勢が、進化し続ける原動力なのでしょう。講演の内容以上のものを教えられた気持ちになりました。
この日も岐阜聖徳学園の玉置ゼミの学生をはじめ、若い方がたくさん手伝ってくれました。ゼミの学生の中にはこの日の学びをより確かなものにするために、事前に「算数授業のユニバーサルデザイン 5つのルール・50のアイデア」を読んでいる方もいました。現役の教師でもなかなかできないことです。とてもうれしく思いました。積極的に学ぼうとする姿勢をこれからも大切にしてほしいと思います。