新しい英語の授業スタイルが学校に生まれてくる予感
- 公開日
- 2015/07/14
- 更新日
- 2015/07/14
仕事
中学校で授業アドバイスを行ってきました。期末試験も終わったあとで、子どもたちの状態がちょっと気になる時期でした。
3年生は、前回は教室を注意して見ることで学習に対して意欲を失くしかけている子どもに気づいたのですが、今回はより目立つようになってきたように感じます。それなりに努力したことが期末試験の結果に現れなかったことが原因かもしれません。3年生は、夏休みの部活動の大会の終了後受験勉強が本格化しますが、夏休み中は担任が直接かかわることが難しくなります。夏休み前に、子どもたち一人ひとりとしっかり向き合い、状況を把握しておくことが必要です。夏休み中でも、必要な子どもにはタイミングを見計らって接触することも考えておく必要があるでしょう。
2年生は前回と比べて大きな変化は感じませんでした。子どもたちはとてもよい姿を見せてくれる時とそうでない時の差があります。しかし、このことを意識して子どもたちを集中させようとしている先生方が増えているように感じます。学年として共通の意識が持てているように感じます。
1年生は前回と比べて落ち着いてきています。授業規律が緩みかけた時期もあったようでしたが、よい方向に向かっていると思います。ベテランの先生方と若手が上手く噛みあっているのでしょう。これからも学年のチーム力を意識して、課題を乗り越えていってほしいと思います。
この日見た授業で気になることがいくつかありました。
初任者が試験の返却後に「テスト心得十訓」として国語のテスト対策の話をしていました。時間配分に気をつけるといった、要は点の取り方です。3年生の受験直前であればこういったことを話すことも理解できるのですが、今はまだその時期ではありません。3年生だけでなく、1年生にも同じ話をしていたことは何をかいわんやです。小手先のことではなく、基本となる国語の力をつけることを大切にしてほしいと思います。授業者の説明を冷めた目で無視していた子どもの姿が印象的でした。
本人と話をしたところ、中高一貫校の出身で中学校から大学受験対策的な授業を受けていたようです。一問一答の問題の解き方を教える授業です。そのため、子どもがじっくりと文章と向き合い、読み取り、考える授業のイメージが全くないようです。一緒に授業を見ることや、構成を考えることなどが必要だと思います。ある程度イメージができたところで、力のある方の授業を参観できるように手配しようと思います。
3年生の数学は分母の有理化を扱っていました。有理化のやり方を説明するのですが、なぜそのようなことが必要なのかが明確にされていませんでした。分母の有理化で、a+√bの形の数は四則演算で閉じる(根体となる)ことの説明までは必要ないでしょうが、標準的な形で表わすことができる(より簡単な形にできる)ことは押さえておきたいところでした。新しいことを学習する時はできるだけその必然性を伝えるようにしてほしいと思います。
英語科は”situation”を意識した授業が増えています。
3年生の現在完了の授業では、同じ天気が続く状況を使って継続を表わす表現を理解させようとしていました。こういった工夫が学年、授業者を問わず見ることができます。まだまだ試行錯誤が続いていますが、英語科全体に授業改善へのエネルギーを感じることができます。この日の英語の授業研究でもそのことを強く感じました。
英語の授業研究は3年生の現在完了の単元の導入の場面でした。
授業者は今年初めてこの学年の子どもたちを受け持ちました。しかし、この日の授業ではそんなことを微塵も感じさせませんでした。子どもたちはよい表情で安心して授業に取り組んでいます。テンポがよく、子どもたちの活動量の多い授業です。子どもたちだけで活動している時も授業者は笑顔でしっかりと子どもたちの取り組む様子を見ています。子どもたちとよい関係がつくれている理由の一つがこういった授業者の姿勢にあると思います。
最初に、この単元のテキストをいきなりCDで聞かせます。ペアで聞き取れたことを確認しますが、ほとんど聞き取れないようです。しかし、それでいいと言ってすぐに次の活動に移ります。子どもたちも気にした様子はなく、すぐに気持ちを切り替えます。なぜこのような活動が最初にあるのかちょっと疑問に思いました。その疑問は最後に解けました。
基本文とその日本語の意味が書いてあるプリントをもとに授業は進みます。一語ずつ全体で読む、ペアで読む。句ごと、1文ごとと何度も形を変えて練習します。ペアで一方が先生役になって出題したり、日本語に対して英語を言ったりと基本文を徹底的に練習します。最後には全部を暗唱できるようにします。子どもたちは集中し、スムーズに活動します。
仕上げとして、最初に聞いた本文のCDをもう一度聞きます。子どもたちは最初と違って今度はかなり聞き取れます。なるほど、最初に利かせた意味がわかりました。本文そのものではありませんが、理解するために必要な基本文を徹底的に練習することで、最初は全くわからなかった英文が聞き取れるようになるのです。子どもたちは、いつもこの形で授業が進むので、最初は聞き取れなくても最後はかなり聞き取れるようになることがわかっています。最後に、この日の自分の成長を実感できることを知っているので意欲が続くのです。ワンパターンであるが故の強みです。授業者が何年もかけて工夫してきたものがこの授業には濃縮されていました。理にかなった構成です。
子どもに基本文を定着させるために、個人、ペア、時にはグループと形を変え、スモールステップで飽きさせずに練習を続けます。人とかかわり合うことで自然に評価もされます。もちろん全体での練習でも、授業者は子どもを適宜評価しています。最初はうまくできなくても、頑張って続けていけば最後は必ず達成感を得られるようになっているのです。同じことを、手を変え、品を変えやり続けるというのは、技能系の教科では、基本的な授業法の一つです。このやり方を自分のものとして消化していました。
多くの英語の授業では、教科書の本文に出てくる文を使って新しい文法や例文を学びますが、そうではなく、事前に学習したことを使って本文でその成果を試すという発想です。このやり方だと、自力で理解したという気持ちになるので達成感が高いのです。
ただ、授業全体が決まった文を読むことと、覚えてくりかえし話すことを中心に構成されています。言葉の理解が日本語の訳に頼っています。ここに、日本語ではなく”situation”から英語を理解し、”situation”を英語で表現しようとする活動を上手く付け加えることでより使える英語を習得させることができるようになると思います。授業者自身もそのことを課題として理解しています。これからどのような授業に変わっていくのか楽しみです。
英語科による授業検討会は、単にこの授業がどうだったかを話し合うのではなく、どのようにして子どもたちがこのように活動できるようになったのかを聞いたり、自分の授業で困っていることや悩んでいることを相談したりと、参加者がこの授業と検討会を通じて自分の授業を改善しようとする意欲を感じるものでした。英語科の先生は自分のやり方にこだわる方が多いのですが、この学校の先生方は積極的に他者から学ぼうします。もちろん自分自身でも工夫をします。それを共有しようとしていることはとても素晴らしいと思いました。今後、この学校に新しい英語の授業スタイルが生まれてくることを予感させる授業研究でした。
でした。