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3.生成発展の理の教育学的応用

公開日
2023/07/11
更新日
2023/07/11

船井幸雄の人間学

3.生成発展の理の教育学的応用
 生成発展の理を認めれば,教育の目的が明確になり教育のあり方も変わってきます。  教育の目的は,世の中の生成発展に寄与する人間を育てることです。つまり、「世のため人のために役立つ人間に育てる」ことです。決して自分自身のためだけではないのです。
 戦後の教育にこの視点が欠落していました。エゴが暗々裏に助長されてきたのです。だから,もうけるためには公害という私害を発生させても平気でした。また、宗教による殺人も行われました。いじめも自分だけよければいいというエゴの表れです。
 戦前の教育が国家のためを強調しすぎた結果,戦後はその反動が強いわけです。しかし,世のため人のために生きるというのは,時代を越えた真理です。アメリカの個人主義の影響も強かったのでしょう。エゴという自由がのさばり,責任ある行動が忘れられました。
 ここで、創造主を仮定するといいことがあります。「創造主は、人間に地球をよくするという使命を与えて、生成発展に寄与すると、その人間に喜びを与え、運というツキを与える。」これは、船井氏の理論をもとにした私の仮説です。
 子どもは、大人になって世の中に役に立つ必要があります。そのためには、学ぶ必要があります。生成発展してきた原理、社会、経済、科学、工学、人間、生物、地球などの進化してきた文化遺産を学ぶ必要があります。大脳新皮質が他の生物に比べてとてつもなく大きいのはそのためだと考えられます。
 創造主は、常にご褒美を考えています。学習したら快感ホルモンを出していい気持ちにさせてくれるのです。これが反対だと、誰が学習を続けると思いますか。人間の構造はうまくできています。最近、脳に関係する本をよく読むのですが、その構造の素晴らしさに創造主の存在を仮定せざるをえません。
 最近、船井氏は,創造主のことを至高存在という表現を用いていますが、どちらでもかまいません。
 世のため人のためというのは、大人になると身近に感じられます。例えば、私は算数教育の講演や示範授業をしたりします。そんなとき。終わって本当に共感してもらうと、お役に立てたという実感がわきます。後日、お礼のお手紙などを戴いたら本当によかったという気持ちになります。また、算数科の授業相談も受けます。相談にのること自体も嬉しいことですが、相談者の研究授業を成功させたときは、我がことのように嬉しいです。こういうとき、脳内モルヒネが出ており。脳波はα波がθ波になって脳が蘇生化しているときなのです。
 そこで、教師にとっての生成発展の理をどう受け止めればいいのでしょうか。
 実は、教育そのものが「世のため人のため」になっていることは自明ですね。つまり、子どもに知識や知恵を授け、引き出し、思いやりの心を育てることこそ、生成発展に寄与していると言えます。だから、子どもに学ぶ喜びを感じさせるような授業をして、共に生きることの大切さを教えていることが保障することです。
 そうすれば、子どもも教師も運がツクのです。 しかし、逆の場合はとても恐ろしい原理となります。子どもに学ぶ喜びを感じさせず、自分勝手な子どもに育てると、子どもも教師も運が落ちるのです。
 その運のよさは、教師の人相や雰囲気、教室の雰囲気に確実に表れます。だからこそ、教師は子どもへの教育は真剣に取り組まねばなりません。しかも、世の中は生成発展しているということは教える内容も生成発展しているのです。例えば教科書だって常に新しい内容を盛り込んでいます。それを絶えず教師は勉強しなければいけないのです。以前勉強した知識だけで教えようとするところに怠惰な心があるのです。そうして。子どもは教師を見放すのです。20代は20代なりに、40代は40代なりの授業ができなくてはなりません。マンネリが大敵です。読書と人から学ことを一生続けることです。
 私は、先週(2月22日)5年の「割合」の所を示範授業しました。初めての挑戦です。意識して生成発展の理を使っています。今日26日に子ども達から作文が届きました。とても嬉しい気持ちです。人生は常に新鮮な気持ちで取組みたいと考えています。
 さて、子どもの時代でも世のため人のためを意識させることができます。学級集団の中での役割を持たせて活動させることです。共生・共創の中でこそ、この意識が育ちます。また、本誌の趣旨であるボランティアは、外の社会との関わりにおいて世のため人のために役に立つことができる絶好のチャンスとも言えます。