日記

体育教師が大切にすべきことを考える

公開日
2016/07/13
更新日
2016/07/14

仕事

中学校で授業アドバイスを行ってきました。2回目の訪問です。前回は学校の様子を見せていただいて全体へのアドバイスを行いましたが、今回は若手4人の授業を見てのアドバイスです。

講師1年目の体育の若手の1年生の授業は、男女共習で行うバスケットボールでした。
遅れてきた子どもを叱ります。遅れてきたことはよいことではありませんが、次からしないように指導することの方が大切です。理由を確認した後、次からどうすればいいのかを子ども言わせることが必要でしょう。体操服を忘れた子どもに対して、授業に参加できない重大な忘れものだから、減点になると注意します。こういったネガティブな言葉が多く出るせいでしょうか、子どもたちの表情がよくないことが気になります。
体育の係を前に出して準備運動をさせますが、始める前に最後列の2人の子どもが靴ひもを結んでいました。しかし、授業者は子どもたちの様子を見ていないため気づきません。結び終わる前に準備運動が始まってしまい、そのまま準備運動を始めてしまいました。靴ひもがほどけているのはとても危険です。授業者が気づいて、結ぶまで全体を待たせるか、靴ひもを結ぶことを優先させるべきでした。この場面に限らず、授業者が子どもを見ていないと思う場面が多かったことが残念です。

準備運動終了後、子どもたちを集めて座らせます。子どもたちがきちんと授業者に集中していないのにしゃべり始めます。ドリブルでコートのまわりを走るように指示をしますが、目線やボールをつく位置といった活動のポイントは確認しません。以前に伝えたのかもしれませんが、子どもたちの様子を見ていると、そういったことは意識できていません。これに限らず、どの活動もやることの指示だけで、目標やポイント、評価の基準といったことが明確になることがありませんでした。

2人がそれぞれボールを持ってドリブルをしながら相手のボールを奪うという活動を、全員同時にやらせました。ペアとペアの間隔がある程度広く取れていたのですが、動いている間にかなり接近しているペアがありました。このような状態だと、はじかれたボールやドリブルミスしたボールが他のペアの足元に転がり危険です。何人かでグループをつくり、その中の1組だけがプレーし、残りのメンバーがプレーヤーのまわりを囲むようにして、危険がないようにするといった工夫が必要です。

2人がコートの左側を2線になって、ランニングパスだけでボールを運び、反対側のゴールにシュートをする活動を行います。経験者にやり方の見本をやらせて、すぐに男女に分かれて練習です。経験者はボールを相手が移動した先にパスできますが、そうでない子どもはその時にいる場所にパスをします。パスを出すポイントを押さえていないので、シュートどころかボールも満足に運べません。しかも左側ですから、右利きの子どもには難しいシュートです。かなり無理がある練習です。力のない女子はパスが届かないので苦労をしています。走る幅を狭くするといった工夫をさせればいいのですが、何の指示もなくただやりっぱなしです。ペースが上がってくると前のペアがシュートし終るのを待たずにスタートを始めます。経験者がハイペースで走っていくと、未経験者がゴール下でボール処理にあたふたしているところに突っ込んでいきます。経験者ですからある程度回避できますが、未経験者の動きは予想ができません。ぶつかりそうになる場面が何度もありました。授業者は2つのコートの間のハーフラインあたりを移動していますが、常に男女どちらかが死角です。ぶつかりそうになっていることに気づけていないので、何の注意もしません。この活動であれば、シュートする側のエンドラインの位置で見るとよかったでしょう。

続いて、3人で交差しながらパスをする(クリスクロスパス)で反対側のゴールに向かい、シュートする練習です。このパスは、走るラインを交差させながらするのでかなり難しいものです。パスした後に全力で走ってポジションをチェンジしますが、自分のパスを受けた人もパスをしてすぐに走り始めます。この時パスした相手の後ろを通るようにしないと、うまく交差できずにぶつかってしまい危険です。授業者は経験者2人といっしょになって見本を見せます。「パスして後ろを通る」と一度だけ言って、後はプレーをするだけです。一度見せて戻った後、「パスした方に走って後ろを通る」と言って、今の動きをやるように指示します。これでできるならば、相当にレベルの高い子どもたちでしょう。
予想通り、未経験者は混乱します。経験者はいつも自分たちだけでプレーするので未経験者に教える者はいません。経験者が未経験者に合わせてプレーしたり、教えたりすることも考えないと、できない子どもはできるようになる場面がありません。
この時も、経験者が未経験者にぶつかりそうになる場面が何度もありました。

3対2の練習を始めます。攻撃が終わった後、オフェンス3人のうち2人がディフェンスで残り、次のグループが攻撃をします。この進め方は口頭でていねいに説明します。実際に経験者がオフェンスで、未経験者がディフェンスで進め方の見本を見せます。しかし、3対2のオフェンス、ディフェンスのポイントの説明はありません。未経験者のディフェンスはボールに対して縦に守るべきなのに、横に広がります。オフェンスの経験者には「形はどうでもいいよ」と自由に攻めさせます。続いて経験者がディフェンスに残り、次のグループがオフェンスに入ります。今度はディフェンスがハーフラインまで上がります。オフェンス側はあせってファンブルしました。何もかも自由だとわけがわからなくなります。形をもう少し決めておく必要があります。
結局この見本を見ただけで、練習が始まりました。見本をやったのは女子だったので、女子はすぐに活動を始めました。しかし、男子はディフェンスにだれも行かずにスタート場所でシュートをしたりしています。授業者は女子が動き出したのを見て、男子の指導を始めました。
そういう指示ではなかったように思ったのですが、女子のオフェンスはクリスクロスパスでボールを運びます。未経験者はボールを運ぶだけで精一杯です。オフェンスもディフェンスも動きがでたらめなので、ただゴールに向かってシュートしているだけです。経験者だけがきちんと動いていますが、それを見るだけでは他の子どもはポイントを理解できません。3対2は攻め方、守り方の基本的な動きを理解するための練習ですが、その一番大切なことを意識できていないので、意味のない活動になっています。
まだラリーが終わっていないのに、次のオフェンスが動き始めました。慣れないクリスクロスパスをやっているので、ボールを見るのに精一杯でゴール下の様子が見えません。ゴール下のプレーヤーもコートの反対側を見る余裕などありません。私たちが制止してやっと途中で止まりました。この間、授業者はまだ反対側のコートにいて、まったくこの事態に気づいていませんでした。
順番を待っている間も仲間のプレーを意識的に見て、頭を使うことが大切です。しかし、待っている子どもたちは、プレーが反対側のコートで起こっているのでよく状況が見えません。ただ、ボーっと立っているだけです。また、見る視点も与えられていませんし、プレーが見えるように練習も作られていません。プレーしていない子どもたちの活動を意識して授業を組み立てる必要があります。たくさんのことをねらうより、まずハーフコートできちんと3対2の基本を身につけさせる練習するべきだったでしょう。

授業者は、途中から最初の集合場所と反対側のコートで説明しています。見学者は最初のコート側にいるので、授業者の説明を全く聞けません。そもそも、何の指示もないのでただ座って時々おしゃべりしているだけです。見学者も授業に参加させることを意識しなければいけません。何らかの役割を持たせることが必要です。ゴール下で、次のグループのスタートの合図をするといったことをやらせるとよかったと思います。

しばらくすると男子の一部が待っている間に遊び始めます。ふざける子どもも出てきますが、授業者はコートのプレーを見ることに集中して気づくことがありませんでした。
残念ながら授業者は体育の教師としての自覚が弱いように感じました。体育は事故の危険と隣り合わせの教科です。常に全体に気を配っている必要があります。このことを強くお願いしました。
1時間の授業の中で子どもたちが話す場面がほとんどありませんでした。プレーを評価したり、よいところや注意をするところを教え合ったりすることもありません。活動を通して子どもたちが考え、できるようになっていく場面が見当たらないのが残念です。
授業者はバスケットボールという競技そのものもあまりよく理解していないように思いました。
まだまだ、経験の浅い先生です。知らなかったりわからなかったりすることがたくさんあるのは当然です。大切なのは、謙虚に学ぶ姿勢です。これからどのように変わってくれるのか、楽しみにしたいと思います。

この続きは明日の日記で。