日記

落ち着いて子どもたちを見ることと、整理して指示をすることが大切

公開日
2016/07/14
更新日
2016/07/15

仕事

昨日の日記の続きです。

初任者の理科の授業は植物の水の通り道の実験でした。
ワークシートを配り、「本日のめあてを書いてください」と指示して、机の間を歩き始めます。歩きながら、教科書ノートを片付けるように指示をします。これでは指示が通りません。友だちに「全部?」と聞いている子どももいます。
教室の端で、「本日のめあては?」と問いかけ、「水の通り道」とそばにいた子どもが答えます。すぐに、「水の通り道」と復唱しながら、教室の前へ移動します。ほとんどの子どもたちが全く参加できません。というか、顔すら上げることもできません。子どもたち全体を見る、コミュニケーションをとるという発想が全くないことが気になります。
また、「水の通り道」ではめあてになっていませんが、子どもたちが疑問に感じているように見えないのが不思議です。授業者がこの授業で子どもたちにどのような力をつけたいのかがよくわかりませんでした。

めあてを言った後でも、まだ書いている子どもがいます。あまりにも遅すぎますが、授業者は「もうちょっと待ちます」と他の子どもを待たせます。待たされている子どもの集中力が落ちていくのがわかります。一つひとつ、活動をきちんとコントロールすることが大切です。
「はい」と言ってきりをつけ、前回授業でやった内容の確認をします。子どもたちの集中はすぐには戻りません。少し移動して、目の前の子どもに答えさせます。「えーと……、忘れました」と答えます。「教室でやったこと」と授業者が言葉を足すと、「ワセリン」と返ってきました。授業者は「そうそう、ワセリン」と言って、この後、「葉っぱの裏にワセリンを塗って蒸散がどうなるかを確かめましたね」と、しばらくしゃべり続けます。教科書ノートを片付けているので、子どもたちは確かめることができません。ただ、先生の話を聞いているだけです。これでは、確認になりません。

続いて「今日は水の通り道ということで、水がどこを通っていくか、特に茎について水の通り道を探してもらう」とこの日の課題を示します。アスパラとセロリを見せて、赤い色水につけておいたと伝えて、ここから実験の手順の説明に入ります。これでは、子どもたちは何も考えないし、疑問も持ちません。まず前時の実験で、植物が水を吸っているらしいことがわかったけど、本当に根から吸って、葉っぱまで行っているのかと問いかけるとよいでしょう。おそらく子どもたちは根から茎を通って葉っぱまで行くと答えると思います。「でも、茎って水道管みたいに穴が通ってないよ?」と揺さぶり、「細かい穴がある」といった言葉を引き出します。「そんなもんどの辺にあるの?」と返して、子どもにどこにありそうか言わせます。
「じゃあ、本当にそうか、どうやって調べるの?」と子どもたち考えさせ、どこを通っているのかトレースするために、マーキングが必要なことに気づかせます。この考え方は、理科ではいたる所に使われます。水に色をつけるといった簡単なものから、同位体を使う方法まで、レベルは違いますが共通の発想です。理科では、こういった実験の考え方を身につけさせることが、とても大切になります。

授業者は2つの試料で水がどこを通るか見てもらいますと言ってから、各班の代表に実験のセットを取りに来させます。いよいよ実験かと思いきや、ワークシートの記入の説明を始めます。続いて、実験器具を取り出させ、次の作業を指示します。ここでまた、授業者の説明が始まります。さすがに子どもたちは、お預け状態で話が続くので集中力がどんどんなくなっていきます。輪切りと縦切りの仕方を、実物投影機を利用して説明しますが、この説明が終わると今度は双眼実体顕微鏡の説明です。聞いている私もいい加減いやになってきます。かなりの数の子どもが説明を聞いていませんでした。
実験の手順をディスプレイに順番に映し出すことでわかりやすく整理し、実験のセットを配った後は一気に実験に取りかかれるようにしたいところです。
最後に「2種類の植物を見るには何か意味があるはずです。それは違いがあるからです」と、必ず違いを発見するように指示をします。これでは、授業者の意図を探りながら答探しをすることが実験になってしまいます。実験では2種類の植物しか観察できませんが、いろいろな植物の観察資料は手に入れることが可能です。子どもたちが実験した後、そういったものをたくさん見せて、共通していること、異なっていることを整理して、2種類に分類できることを気づかせる場面をつくりたいところです。

子どもたちが実験に取りかかるまでに10分以上の時間がありましたが、ほとんど受け身の状態でした。子どもたちは、班で2人ずつアスパラ組とセロリ組に分かれて実験をします。分ける意味が今一つよくわかりません。情報を交換させたいのでしょうが、ここはプレパラートを交換するか、移動して互いに見るようにしたいところです。
組分けから実験が始まりますが、子どもたちの動きが悪いことが気になりました。待たされすぎて、意欲が無くなってしまったのかもしれません。

授業者は常に教室の中を動き回っています。まわり方にルールがありません。やみくもに移動しているように見えます。死角の多さが気になります。勝手に他の班に行ってしゃべっている子どもがいたりするのですが、授業者は他の班にかかわっていて気づきません。まずは、全体を眺めて支援が必要と思われるところを見つけて、そこに行くようにするとよいでしょう。
試料を切っている時に、一人の子どもが大きな声で他の班の子どもちょっかいをかけました。それをきっかけに他の班でもざわつき始めます。刃物を扱っている時なのでテンションが上げることは避けたいところです。一度子どもたちの作業を止めて、注意をしたいところでした。
子どもたちに与えたナイフの切れ味が悪いせいか、上手く試料を切れない子どもたちが結構います。授業者はそこへ行っては、せっせと自分のナイフで切ります。時間がかかるかもしれませんが、ナイフを貸して子ども自身にやらせたいところでした。

作業中に、スケッチが終わった人はまとめ始めるように大きな声で歩きながら指示をしますが、子どもたちは手を止めることはせずに聞き流しています。
終盤になると、とにかく子どもたちが集中していません。大きな声で個別に指導していますが、子どもたちが集中を失くす方向に作用しています。
「水の通り道がどうなっているのかをまとめるのですよ」と歩きながらしゃべりますが、ここで言わなければいけないような状態であれば、実験をいったん終えて後片付けもさせてから、まとめに集中させた方がよかったでしょう。観察に不安があるのであれば、もっと早い時期に中間で発表させて、友だちの観察結果を共有して全体のレベルをそろえるといったことが必要です。実験にかなり時間をかけているのですが、密度の低い学習になっていました。

「全員スケッチが描けたようなので片付けに入ってよろしいですか?」と、片付けの説明に入ります。「いったん手を止めてください」と指示しますが、まだ手を動かしている子どもがたくさんいます。作業をしていない子どもも顔は上がっていません。この状態で説明を始めても伝わりません。子どもたちを見ていないというよりは、自分がしゃべることしか頭にないのかもしれません。
たくさんの指示がありました。どこかに一覧で片付けの手順を示した方がよさそうです。せっかくディスプレイがあるのですから、そこに表示しておくとよいでしょう。
書くのは後にして全員で作業するように指示しますが、なかなか子どもたちは動き出しません。ボーとしている子ども、隣としゃべっている子どももいます。子どもたちが動き出してから、「ペトリ皿とビーカーは拭かなくていいよ」と追加の指示をします。こうなると、子どもたちはどんどん混乱していきます。試料を生ごみとして捨てるという最初にした指示をすぐに実行した班は一つだけで、次がなかなか現れません。直近の指示だけが、強く子どもたちに残っているように見えます。
片付けの途中で、「片付いていないのにプリント書いている人は自分勝手な人」と強い口調で注意します。しかし、片付けをせずに遊んでいる子どもや、やるべきことが終わってすることのない子どももいます。釈然としない思いの子どももいたのではないでしょうか。
子どもたちがだらだらと動くので、大した片付けでないのに何分もかかってしまいます。早く終わっている班の子どもたちはすることもなく待っています。授業者の指示の悪さが原因の一つです。授業者は実験器具を受け取ることに手いっぱいで子どもたちのその様子を見ていませんでした。

片付けが終わってから、「後2分ほどでチャイムが鳴ります。プリントは完璧ですか?」と問いかけます。こういうプレッシャーをかけるので、余計に片付け中でもプリントを書こうとするのです。注意をする代わりに「早く片付けてから、書こう」と言ってあげればよかったのです。
日本語がおかしい人もいるので、終わった人は黙読をしてちゃんと相手に伝わるかどうか確認するように指示します。せっかくグループでやっているのですから、互いのまとめを聞きあって、ブラッシュアップさせればよいと思います。指示中も、指示した後も子どもたちの声が聞こえてきます。ざわざわ感が止まりませんでした。

場面ごとの子どもたちの活動のポイントや目指す姿を意識することが大切です。そうすることで、子どもたちを見ようとするようになると思います。また、いつ何をどのような形で指示をするかを明確にして授業に臨むことも必要です。指示が悪いため子どもの動きが悪く、密度の薄い活動になっていたのが残念でした。この授業者がどのような変化をしてくれるのか、今後に期待したいと思います。

この続きは明日の日記で。