活動が成立するために必要なことを意識する
- 公開日
- 2016/07/20
- 更新日
- 2017/03/13
仕事
私立の中学校高等学校で授業アドバイスを行ってきました。
この日は高等学校で英語の授業と研修の持ち方についての打ち合わせを中心に行いました。
英語科では、積極的に技能検定に取り組んでいます。この日は”Speaking”の検定が行われていました。タブレットを利用して行うものです。機器の確認や操作の説明に多少時間がかかるものの、子どもたちはきちんと試験を受けることができていました。これまで”Speaking”は試験会場で試験管と直接やりとりをすることで行われていましたが、ICT機器の進歩で同時に多くの受検者に対応することができるようになりました。今後、こういった形の試験が普及していくのでしょう。
英語科は新しい試みに挑戦する姿勢があります。既存の形にとらわれず、目の前の子どもたちに対してどのようなことをすればいいのかを真剣に考えています。この学校ならではのカリキュラムができつつあります。
高校1年生の英語表現の授業は、子どもたちが課題に取り組んでいる場面でした。
授業者はまず子どもを見ることを意識したいと話してくれた方です。確かに以前よりは子どもたちを見ることが増えているようです。また、意識したのか、子どもたちとの関係ができてきたのかはわかりませんが、表情も以前よりは少し柔らかくなったように思います。
途中で課題の指示が悪かったことに気づいたのでしょう。課題の指示をし直します。しかし、作業をきちんと止めなかったのでほとんどの子どもの顔が上がりませんでした。
子どもたちは時々まわりと相談しながらきちんと取り組んでいますが、一部は終わってしまったのか、手持ち無沙汰にしています。こういった個別の作業の時は、必ず終わった時の指示をしておくことが大切です。
作業をやめさせて、子どもたちを4人のグループにします。子どもたちは次の活動がよく見えないせいか、動きが悪いのが気になります。答の確認とその説明をグループで行う指示をするのですが、グループの形になっているので、子どもたちは授業者の方を見づらくなっています。どうしても授業者と目線が合いません。途中でそのことに気づいて、前を向くように指示しましたが、それでも顔が上がらない子どもがいました。指示はグループになる前にしておくとよかったでしょう。
授業者は「答とそのプロセスの確認」と繰り返して指示しますが、前回やっているとはいえ、どうも子どもたちは何をするのか具体的によくわかっていないようでした。プロセスの確認とはどういうことなのかを具体例で示す必要があると思います。
話し合えているグループもありますが、かかわれていないグループも目立ちます。やる気がないというよりは、個人でやっているようです。授業者は机間指導をしていますが、まずこのようなグループのところに行って、状況を確認することが必要でしょう。その上で、必要に応じて子ども同士のかかわりを促すようにしてほしいと思います。
授業者がグループの一人に話しかけると、他の子どもはそこにかかわろうとしなくなります。それまで、グループとしてかかわれていたのを、授業者が分断することになってしまいます。また、これもよくあることですが、授業者が一つのグループと長くかかわると授業者の声が聞こえてくるので、子どもたちの声も大きくなります。相乗効果で次第に学級全体のテンションが上がってきます。グループ活動の時に見るべきもの、なすべきことは何かを意識することが大切です。
「はい、じゃあ」とだけ言って、黒板に次の活動のための板書を始めます。指示がはっきりしないので、子どもたちの状況は変わりません。しかし、授業者が板書をしているので、次第に静かになっていきます。板書を終わった授業者が子どもの方を向いて、「いいかなー」と子どもたちの注意を向けさせようとしますが、なかなか子どもたちは静かになりませんでした。授業者は子どもたちを見て待っていましたが、子どもたちがざわざわしたことを周りに迷惑であると説教を始めました。ざわざわした理由の一つは、授業者の指示がはっきりしないことが原因です。これでは、子どもたちに授業者の言葉は届きません。顔も上がりませんし、無視して自分の作業をしている子どももいます。ざわざわしたという結果だけをとらえて指導するのではなく、その原因を考えて対応することが大切です。こういう形で子どもたちを叱ると、だんだん授業者から気持ちが離れていってしまいます。
“investigator”を各グループから出して、他のグループの答と説明を聞いてくる活動を始めます。授業者がだれを“investigator”にするのかの指示をやり直して、板書を変更している間に子どもたちのテンションが上がります。こういった指示は素早くしないと、誰がやるかでどうしてもテンションが上がってしまうのです。
“investigator”が立ち上がって活動を始めますが、動きが重いことが気になります。答を確認することはできますが、説明を聞き合うことが具体的にイメージできないので、どうすればいいのかよくわからないからだと思います。
しかし、各グループと“investigator”が交わると、今度は一転してテンションが上がります。答を聞き合うことは頭を使いませんからテンションが上がりやすいのです。つまり、説明を聞き合うということはほとんどされていないのです。
“investigator”がグループに戻ってくると、答がどうであるかだけが共有されます。というか、根拠となる説明はもともと聞いてくることができていないのです。
授業者は、活動することを指示するだけで、その活動をさせるために必要なことが何かを意識できていません。また、活動の目標は何か、その評価は何かも明確にできていませんでした。そのため、子どもたちは一番わかりやすい、答を求めるだけになってしまいます。「説明」「プロセス」という言葉が出てきますが、それが具体的にどういうことかを示すことや、学級全体で共有する場面が必要でした。
授業が成立するために必要なことをきちんと整理して、授業に臨んでほしいと思います。
この続きは明日の日記で。