若手の急激な成長に驚く
- 公開日
- 2011/11/22
- 更新日
- 2011/11/22
仕事
昨日は小学校で、若手への授業アドバイスと授業研究のコーディネートをしてきました。
1年生の音楽の授業では、子どもたちが指示に対して素早く動けるようになっていることを感じました。後で聞いてみると、前回のアドバイスをもとに後片付けなどを指示した時に、ストップウォッチで時間を測り、子どもたちの進歩をほめるようにしたようです。素直に挑戦する姿勢はとても素晴らしいと思います。子どもたちの動きがよくなることで、先生にも余裕も出てきたようで、授業中の笑顔もずいぶん増えてきたようです。教師がよい笑顔を見せていると子どももよい表情を見せてくれます。先生と一緒に全員でリズムを取る場面では、みんなとてもよい表情で参加していました。
3年生の担任の授業では、教室で子どもたちの姿を見た瞬間に、以前との雰囲気の違いを強く感じました。もともと子どもたちとの関係はよかったのですが、集中度が違うのです。指示に対する動きもよくなっています。一つひとつの場面での精度があがっている感じです。何が違うのかを観察してみると、指示を出した後や子どもの活動場面などで、先生が一人ひとりをきちんと見ているのです。そのため、全員がそろうまで待てたり、できていない子どもへの指導が行き届いているのです。
また、黒板に答を書いた子どもが後から気づいて直そうとした時に、他の子どもがいまさら直すのはダメだと非難しました。先生は、非難した子を叱ったり、直していいよと言ったりせずに、間違いに気づいて直すのはとてもいいことですと評価しました。このように、よい行動を価値づけすることで、子どもたちの中によい価値観が育っていきます。
この先生の急激な成長に驚きました。聞けば、TTで入っている教頭が、子どもたち一人ひとりを見ることの大切さを言い続けていたそうです。こうした働きかけがとても大切であることを実感しました。
4年生の算数の授業では、子どもたちの素直な反応が印象的でした。わかるときは元気に手を挙げてくれますし、わからないときは手が挙がりません。当り前のことかもしれませんが、子どもたちが素直に反応できるのは、教師との人間関係ができている証拠です。手が挙がらないことで、説明がきちんとわかっていない、混乱しているといったことがよくわかります。そのことが結果として全員がわかる授業へとつながっていきます。
授業者は教科書をしっかり読みこんでのぞんでいたのですが、もう1歩及ばなかったようです。小数×整数の筆算の手順で、最後に「小数点をうつ」という記述があります。授業者はこの説明で、小数点を下におろすと言いました。確かにそれでよさそうなのですが、このあと習う小数×小数では、これは通用しません。そのことを考えると、ここは「小数点はどこにうてばいい」とその理由を考えさせることが大切になります。別の考え方が教科書に載っているのも、そのためです。過去の学習内容と、この後の学習内容とを合わせて考えることで、教科書はよりよく理解できるのです。このことを伝えました。
5年生の担任の先生は、中学校から小学校に異動して、その差をうまく自分の中で解消できずに悩んでいました。小学校から中学校への異動でも似たようなことがよくありますが、ここを乗り切ることが大きな成長につながります。産みの苦しみのようなものです。
この先生とはじっくり話を聞きながら、自分のスタイルを捨てるのではなく、欠けているものを足すことをヒントとして示しました。うまくいかないと余裕がなくなり笑顔も減っていきます。一度にいろいろなことをしようとせずに、気がついたときに「笑顔をつくる」ことを意識するくらいでよいとアドバイスをしました。
6年生の国語の授業は、以前と比べて子どもの集中度がずいぶん上がっていました。先生の指示も明確で、子どもたちを受容することもできています。若干集中力がとぎれてしまう子に対して、どのように接していくかが今後の課題です。子どもの状態がよくなったとき、この程度でよいと思うのか、何とか全員と思うのかが分かれ道です。ここでもうひと踏ん張りできれば、全員が集中した授業ができるようになります。ここまで頑張ってきてくれたので、きっと100%を目指して工夫をしてくれることと思います。
授業研究は3年生の理科の実験でした。この授業者も若い先生ですが、子どもたちの聞く姿勢がとてもよいのが印象的でした。
実験の予想を発表する場面で、友だちの意見に対してほとんどの子どもが賛成のハンドサインを出します。しかし授業者はそこで、先ほどの意見の内容を確認しました。挙手したのは一人だけでした。挙手した子にもう一度発表させることで、こんどは本当に集中して聞いていました。ハンドサインを形式的にせずに、きちんと聞くことを求め、聞いていたことを評価することで、聞く姿勢がつくられてきているのだと感じました。
また、理科の実験では、実験方法の説明が一方的でくどくなり、時間が取られてしまうことがよくあります。授業者は実物による簡単な説明の後、「練習しよう」と実験ができる状態に机を動かし、子どもを活動させることで受け身の時間を減らしました。そのあと、全体でポイントを確認しました。先生がくどく説明するのではなく、子どもに言わせることで、きちんと覚えていなかった子どもも再確認できます。実験はどの班も戸惑うことなくとてもスムーズに進みました。
検討会では、担任を縦割りにして日ごろ関係が薄い先生同士がグループになって話し合えるようにお願いしました。ベテランと若手が顔を寄せ合い、とてもよい雰囲気で進みました。やはり、多くのグループで子どもたちの聞く姿勢のよさや、指示がきちんと通っていることが話題となったようです。そこで、子どもたちのようすと教師のかかわりについて、私の方から少しまとめてお話をさせていただきました。
この学校への訪問は5回目で、授業を見るのは4回目です。正直、急激に授業が変わることは期待していませんでした。しかし、この1月で若い先生方の授業と子どもたちのようすが本当によい方向に変わっていました。一人ひとりが授業に真剣に向き合い、できることを一つひとつ積み重ねてきたのでしょう。校長をはじめとする管理職や主任のバックアップもあったに違いありません。若い教師が伸びる雰囲気ができつつあります。若い教師が伸びてくることはベテランや中堅の先生方にとってもよい刺激です。授業研究を通じてこのよい流れが広がっていくことを期待しています。
3学期に後2回訪問する予定です。若手だけでなく、ベテランや中堅にどんな変化が起きるのか楽しみです。
若い教師の成長にたくさんの元気をいただいた1日でした。