研修での個の学びが学校に広がる
- 公開日
- 2011/11/24
- 更新日
- 2011/11/24
仕事
中堅の先生を対象にした、市の授業力アップの研修会でコーディネータを務めました。年3回の最終回です。夏におこなった模擬授業による小学校2年生国語の指導案の検討(模擬授業から学ぶ参照)を受けての授業研究です。
模擬授業のあと授業者はずいぶん悩んだようでしたが、ふだんやっている授業の流れで進めることにしたようでした。子どもたちはとても落ち着いていて、友だちの言葉を聞こうとする姿勢ができていました。ほとんどの子どもが発表者の方に体を向けて聞いています。
教科書の本文が抜き出されたワークシートに、わかったこと、疑問、思ったこと、登場人物の気持ちをその箇所に線を引いて書きだす作業をしましたが、素早く鉛筆を持って真剣に取り組んでいました。日ごろから鍛えられているのでしょう、どの子もしっかりと書いていました。授業者が、今日はみんなが書いてくれた疑問をもとに話し合うことを告げた時、子どもたちはとても面白い反応をしてくれました。「えー」「書いてない」と何人もの子どもがつぶやいたのです。この場面に限らずこの学級の子どもたちは、「ああ」「そういうこと」といった同意や「えー」「違う」といった否定やブーイングといろいろな反応をしてくれます。否定も相手を攻撃するようなものではないので、それほど気にはなりません。なにより安心して反応できるという雰囲気が学級にあります。それは授業者が基本的に子どもたちのつぶやきをよく拾っていること、肯定的にとらえていることの表れだと思います。話し合いの進め方にブーイングが出たのは、実は子どもたちが積極的に授業に参加している証です。挙手して発言したいからこそ、疑問を書いていない子どもは参加できないと訴えたのです。
授業は子どもたちの疑問が教師のねらっているところとずれていたためなかなか焦点化できませんでした。子どもたちの言葉を活かそうとしていたのですが、最後は「先生の疑問」を出して、焦点化することになってしまいました。その前後から挙手・発言する子どもが固定されてきて、多くの子どもたちの集中力が落ちてしまいました。
子どもたちのブーイングもそうですが、どうも意見のある子どもだけが活躍する傾向があることに原因がありそうです。友だちの発言を聞いてそれをもとに考えたことを発表させようとはするのですが、すぐに挙手させればその時点で考えを持っていた子どもしか参加できません。考える時間を少し与えるだけで大きく変わっていくはずです。「ちょっと考えてみて」「まわりの子と話してみて」といった時間をつくるとよいでしょう。
また、今回の授業では「疑問」とすぐに発言を制限するのではなく、どこに線を引いたかまず挙手で確認して、それから進め方を決めるという考え方もあります。たくさん線を引かれた部分について意見を聞く、逆にほとんど線を引いていないところをとりあげる。子どもたちの実態をある程度把握することで流れをコントロールできます。
間違った読み取りをした子どもに対して、修正する意見を発表させる場面がありました。そのとき、ほとんどの子どもがハンドサインで賛成を表明しました。間違った子どもはしばらく手が挙がりませんでしが、大勢が決した後、ようやく賛成のサインを弱々しく挙げました。その後しばらくは、その子どもの顔は上がりませんでした。こういった場面では、ハンドサインは圧力につながることがあります。すぐにハンドサインを使うのではなく、間違えた子どもに今の意見を聞いてどう思うかたずねてあげることが必要です。本人が納得すれば、人の意見を聞いて考えを変えたことをほめる、いい意見だと修正した子どもをほめる。こうすることで間違えることへの抵抗感も薄くなり、子どもたちの人間関係もよくなります。
子どもたちが真剣に授業に取り組んでくれるので、たくさんのことに気づくことができました。
検討会では、参加者のレベルの高さが印象に残りました。どのグループでの話し合いも授業のポイントがよく押さえられていました。この研修は何年も続いています。今まで参加された先生方がきちんと学校に戻って研修で学んだことを伝え合っているのでしょう。授業を見る視点や検討会での発言が年々レベルアップしているように感じます。研修が個人にとどまらず学校や市で共有されていることに感心させられます。この日の学びも参加された先生方の学校にきっと広がっていくことと思います。
個の学びが全体に広がり、それがまた個に還元されていく。市としての研修の一つのあり方として参考になるのではないでしょうか。手ごたえのある研修で、とても充実した時間を過ごすことができました。先生方ありがとうございました。