子どもとの関係がよいことで満足しない
- 公開日
- 2012/10/12
- 更新日
- 2012/10/12
授業ワンポイントアドバイス
いろいろな学校を訪問して感じるのは、受容的な態度で接することで子どもとよい関係をつくっている教師が増えていることです。子どもは教師の説明をしっかり聞きますし、当然指示もよく通ります。教師にとって、とても居心地のよい教室になっていきます。注意してほしいのはここがゴールではないということです。このことについて少し考えてみたいと思います。
子どもが説明を集中して聞いてくれるので、教師の説明が増える傾向があります。指示が通るので、失敗しないようにていねいに、細かいことまで指示して動かそうとするようになります。子どもは教師の話をよく聞けば理解できるのでそれで満足しますし、指示にきちんと従えばうまくいくので、指示を待つようになります。受け身になっていくのです。
いやいや、教師との関係がよいので積極的に発言しようとするようになる、積極的に挙手するようになると言われるかもしれません。確かに教師のことが好きで、発言をポジティブに評価してもらえるので、指名されようと積極的になります。しかし、往々にして自分が発言することばかりに気がいってしまい、友だちの発言をきちんと聞かなかったり、自分が発言することで満足して、その後は集中力をなくすうようになったりします。(テンションを上げすぎない参照)
また、教師が発言者に問い返したりして考えを深めていく場面で、これは2人の問題で自分とは関係ないと無視するといった態度を見ることもあります。しかし、次の発言のチャンスがくれば、すぐに手を挙げます。友だちの話を聞いて理解することよりも、自分が指名され発言することの方が大切なのです。友だちとのかかわりがうすくなっていくのです。
作業中にわからないことがあればすぐに教師に聞こうとします。その間は教師を独占することができるからです。答がでると、すぐに「これでいい?」と正解かどうかの確認を求めるのも同様の理由です。ほめてもらうことへの期待もあります。自分でじっくり考えたり、友だちと相談したりするといった姿勢が育たないのです。
子どもとの関係がよいことで満足しているとこのような危険があるのです。
しっかりと聞けるからこそ、教師の説明を減らして子どもに問いかけることをし、考えることをうながす。指示を減らすことで、自分で考え、判断することを学ばせる。ときには失敗させることで、より大きな学びにつなげる(失敗から学ぶためには参照)。子どもの発言を他の子どもにつなぐことで関係をつくり、友だちに認められ、評価される喜びを経験させる(挙手の様子から何がわかる参照)。
教師に頼らず自分で考える、判断して行動するように仕向けたり、子ども同士のかかわり合いの場面を増やして関係をつくったりすることが求められるのです。
子どもとよい関係をつくるのは、教師の基本です。これができていないと何もうまくはいきません。しかし、でき上がった子どもとの関係の心地よさに満足してそこにとどまっていてはいけません。まだまだ途中なのです。、子どもたちの成長のために次のステージを目指してほしいと思います。