日記

中学校の授業研究でアドバイス

公開日
2012/11/13
更新日
2012/11/13

仕事

昨日は、中学校で授業研究のアドバイスをおこなってきました。それに先立ち、何人かの先生方と一緒に校内の授業のようすを参観させていただきました。

1学期に訪問したときと比べて子どもたちの集中力が落ちているように感じました。2年生、3年生では教師によって態度が違ったり、教師の目が向いていないときに緩んだりする場面を目にしました。1年生では、授業規律がまだしっかりと確立していないようです。どちらが先かわかりませんが、教師の笑顔も子どもたちの笑顔も少なく感じました。
子どもたちが受け身となる場面が多く、挙手も少ない傾向にありました。わかった子ども、積極的に挙手する子どもが発言し、その言葉を受けて教師が一方的に説明する授業が目立ちました。子どもたちは静かにはしているのですが、自分たちで考えているようには見えません。教師の説明を無批判で受け入れ、板書を写すことが中心でした。子ども同士の関係も決して悪くはないのですが、ペアやグループ活動でテンションが上がる傾向がありました。あまり深く考えていない発言、課題と直接関係のない話題が気になります。

授業研究は、2年目の教師による1年生の英語の授業でした。
授業の最初に、曜日や天候、時間などを次々に全体に聞きます。子どもたちは、大きな声でしっかり答えることができていました。続いて、英語で好きな教科や運動に関して個人に質問します。その友だちの答えに対して、他の子どもにたずねます。子どもは一生懸命考えながら、たどたどしくても自力で答えます。とても集中していました。このとき、指名されていない子どもも顔を向けて真剣に聞いています。とてもよい姿でした。友だちの発言内容に関する質問を1人の子どもが答えるのではなく、全体で答えさせることで、より多くの子どもたちを活躍させることができます。このあたりのことを意識するとぐっとよくなると思います。

コーラスリーディングは、授業者が読んだ後それに続いて子どもが教科書を読みます。子どもたちはしっかりと声を出すことができています。その後1分間の音読の練習をしました。ここでも子どもたちはしっかりと練習をしていました。しかし、この練習は文章を覚えるためのものか、滑らかに読む練習なのか、子どもたちを見ていてもよくわかりません。1分間にどれだけ多く言えるかを競っているようにも見えました。練習終了後は、何も評価をせずに次に進みました。この一連の音読で教師の見たい子どもの姿は大きな声を出すことで、それ以外の目的はなかったようでした。目的を明確にすることで、子どもたちが自己評価することもできます。滑らかに読めるようにしたければ、教師が最初の単語を読むだけにして、後は子どもたちだけで読ませる方法もあります。覚えさせたければ、教科書を閉じてコーラスリーディングをする方法もあります。目的が明確になれば、それに応じて練習方法も変わっていきます。次は、こういうことに挑戦してほしいと思いました。

本時の主たる課題は、英語で自分たちのグループの紹介をすることでした。英文の基本形として、be動詞の用法と一般動詞の用法を復習して、まず個人で文をつくりました。ワークシートにはbutを使う、グループのメンバー1人を紹介する、we our group以外の主語を使うといった文も課題としてあげてあります。子どもたちは一生懸命に取り組んでいましたが、なかなか文がつくれない子どももいました。
個人作業が終わった後、「こういう文をつくってくれた人がいました」といくつか授業者が紹介しました。せっかく子どもが書いたのですから、ここは子どもに発表させたいところでした。
この後グルーループで紹介文をたくさんつくる作業に移りました。5人のグループでした。班長がいるのでしょうか、仕切っている子どもがいます。グループで発表するので、みんなの意見でどれを採用するか決めることになります。こうなると、どうしても自信のない子は発言できません。また5人という人数で、男子同士、女子同士が隣り合っていることともあり、全員がうまくかかわり合えていませんでした(グループ活動の人数参照)。用意された紙にグループの紹介文を書き、グループごとに発表しました。文をつくることが目的だったので、子どもたちは何を意識して発表するのか、どこを注意して聞くのか明確になっていません。文を見せずに発表して、内容が伝わることを発表の課題とする、といった工夫が必要です。発表の後、紙を黒板に貼って子どもたちの文の間違いを授業者が指摘して修正します。この場面も子どもたちを中心にして進めたいところでした。

この一連の活動では、子どもたちが文をつくるために必要なことが授業者に意識されていませんでした。紹介文の内容とそれを英文にするという2段階です。授業のねらいにつながるのは明らかに後者です。であれば、最初の段階をできるだけクリアしやすいようにする必要があります。作業に入る前に、「どんなことを紹介するといだろうね?」と子どもたち投げかけ、材料を集めておく。その上で英文をつくるための方法をある程度与えておくとよいでしょう。「今まで習った文で、どんなのが使えそう?」「どこを見るといい?」と問いかけたり、辞書を用意して「必要なら使っていいよ」と置いたりする工夫がほしいところでした。

最後に振り返りを書かせましたが、「○○できたか」という行動面、「○○がよかった」という情意面での振り返りが中心でした。ここは、何ができるようになった、何がわかったといった学習面での振り返りを大切にしてほしいところです。

検討会では、グループでの活動が話題になりました。5人組でよかったのか、うまく参加できない子どもがいた、個人で文を書けなかった子どもがいたので個人作業の時間はもっと必要だったのではないかなど、子どもの事実をもとにした意見がでてきました。また、若い先生が、最初の場面での子どもたちの聞く姿勢のよさと、課題のグループの紹介は日本語であっても何を書いてよいかわからないので、何か文の内容を考えるための手立てが必要だったのではないかという意見を発表してくれました。とても素晴らしい発表でした。
私からは、子どもが集中して聞こうとしていたことや、子どもの声がよく出ていたことなどのよかったところと、話題になったグループ活動について、そして学校全体の授業を見ての感想などを話しました。
グループ活動では、自分の考えを持つためにグループを利用するという原則、つまりグループで一つにまとめないということ、班活動と違ってリーダーは必要のないこと、個人作業で時間を与えたからといってできない子はできないままであるので、時間を延ばすよりもわからない、困った時に友だちに聞くことができるようにすること(一人で考えることにこだわりすぎない
個人作業にこだわりすぎない参照)などを伝えました。また、全体に関しては、子どもたちが受け身であること、教師がしゃべりすぎていること、笑顔が少ないこと、ポジティブな評価が少ないこと、教師が正確を求めていること、わかった子どもしか活躍していないこと(「わからないところ」から始める参照)、子どもが友だちの発言を聞くことに価値がないと考えていること(子どもが友だちの発言を聞かない理由
友だちの方を向いて話を聞く参照)などを伝えました。

検討会終了後、希望者と面談の時間をとりました。たくさんの方が希望してくださいました。授業をよくしたいという意欲の現れです。授業研究での授業者は、こんなことを話してくれました。

前回、子どもたちの見たい姿を意識するようにアドバイスされて、そのことを意識して授業をしてきたら子どもたちが変わってきた。子どもたちとの距離も少し縮まったように思う。

そのことは授業からも伝わってきました。素直にアドバイスを実行する姿勢が素晴らしいです。だからこそ、次の課題が見えてきます。次回、授業を見るのがとても楽しみになりました。
他の先生方も本当に真摯に自分の授業について考えていました。時間の関係で多くをアドバイスできなかったのが申し訳なく、とても残念でした。
3学期にまた訪問することができそうです。次回はその日だけでなく、事前に授業をつくりの段階からかかわらせていただければと思っています。たくさんの授業を見て、たくさんの先生と話ができた、充実した1日でした。ありがとうございました。