青山新吾先生から学ぶ
- 公開日
- 2012/11/14
- 更新日
- 2012/11/14
独り言
本年度第5回の教師力アップセミナーは、ノートルダム清心女子大学の青山新吾先生の講演でした。特別支援教育に現場の教師としてかかわってこられたのち、大学に移られた方です。
特別支援教育に関してチームワークという言葉がよく言われます。実際にそのありようはどうあるべきか、具体的な事例をもとに考える材料を与えてくださいました。
直接指導する担任の思い、それを実現させるために他の教師がどう支えるか。たとえ、子どもが飛び出すことがわかっていても、叱るべきときは叱らねばならない。叱らなければ、まわりの子どもが嫌になる。それは、飛び出した子どもをフォローしてくれる教師がいることを信じられるからできること。特別な子もそこまでやれば叱られる、その事実が他の子どもの安心感につながり、だからこそ、その子にやさしくなれる。
チームワークとはどうあるべきか、考えるきっかけをいただきました。
支援を要する子どもが落ち着いてくると、それで安心してしまうこともよくあります。そうではなく、その子どもの将来を見据えて、どうあればよいかというゴールを考えることが大切になります。このお話は、荒れた学校が落ち着いたときとよく似ています。そこからどこへ向かうのか、次に何をするのかが大切になるのです。
学級経営でも同じです。「この子にこうなってほしい」「こんな学級にしていきたい」。そういう目指すゴールを持つことが必要です。一気にゴールに到達するのは難しいことです。だからこそ、できるようになるといいね、ここまでできたねとゴールまでのステップを意識しフォローしていくことが大切になります。
特別支援も通常の学級経営も大きな違いはありません。特別支援の考え方を通常の学級経営に活かすと言われます。逆に、通常の学級経営で大切なことが特別支援教育でも大切になるといってもよいと思います。学級経営がしっかりできる教師は支援を要する子どもがいてもうまく対応できることがその証拠でしょう。
基本となることは、まずコミュニケーションをしっかりとることです。子どもたちに「あなたはここにいていいんだよ」と居場所を持たせる。「みんな、あなたのことを大切に思っているよ」と自分が見捨てられていないことを伝える。こういうことが大切になります。
その上で、一人ひとりのゴールを意識し、できたことをほめ、次のステップに向かう意欲を高めることが大切になります。できた、できなかったというデジタルではなく、できるようになる途中であると認識し、そこで必要な言葉、メッセージをどう与えるかを考えることが大切なのです。
また、支援を要する子どもとのコミュニケーションで心理的距離を意識してうまくいった例もお聞きすることができました。直接話すと反発する子に、誰に言うともなくつぶやくことで聞かせる。心理的距離を少し調整することで、子どもの姿勢が変わることもあると教えていただけました。
特別支援に関しては、多くの方がピンポイントの「正解」を求めます。青山先生はやさしい口調で、この事例はたまたまであることを伝え、いかかでしょうかと私たちに考えることを促します。どんな子にも通用する魔法のような方法はありません。個の抱えている問題やその背景は異なっています。一人ひとりと向き合って、手探りで対応を見つけていくしかないことがたくさんあるのです。
その子に応じた対応が必要だから「特別」支援教育なのです。そうやさしく諌められているようにも感じました。
豊富な具体例をもとにしたお話と特別支援教育への青山先生の思いを感じることで、特別支援だけでなく子どもたちを育てるということはどういうことなのか、じっくり考えるきっかけをいただきました。ただ、知識や経験を伝えるのではなく、一緒に考えていきましょうという青山先生の講演姿勢も素晴らしいものでした。多くの学びと考えるきっかけをいただけた素敵な講演でした。ありがとうございました。