日記

幅広い層が授業を公開する

公開日
2014/10/10
更新日
2014/10/14

仕事

昨日は、小学校で授業アドバイスを行ってきました。事前にいただいた資料を見ると、学校として、毎日の授業でどのようなことを意識しようとしているのかよくわかります。授業検討では、「子どもたちの考えをつなぐ」ために、手立て・具体的な手法を協議しようとしています。

授業研究の前に、4つの学級の授業を見せていただきました。教室を移動する時に廊下から各教室の様子も観察しましたが、全体的に感じたのは、子どもたちの姿がバラバラだということです。教師の指示が徹底できていないということもそうですが、教師がこの場面で子どもたちにどういう姿を望むのかがはっきりしていないことが大きな要因と思います。
また、一問一答がとても多いことが気になります。子どもから意見が出ると、すぐに教師が説明を始めます。「子どもたちの考えをつなぐ」ことを意識して子どものつぶやきを拾うのですが、「○○さんがいいことを言ってくれた」とそこからは教師が引き継いで説明をしてしまいます。子どもたちの指名も挙手に頼りすぎでした。

6年生の若手の担任は社会科の授業でした。資料を見て気づいたことを子どもに問いかける場面です。「江戸時代の人々の暮らし」というテーマです。子どもたちに「気づいたこと」と問いかけますが、子どもが資料を確認する間もなく「どんな身分の人がいる」と畳みかけます。すぐに手を挙げた子どもを指名します。子どもが考える間がありません。すぐに反応する一部の子どもだけが活躍して、他の子どもは参加する間もありません。次第に集中力を失くす子どもが目立ってきます。
見つけたものが資料のどこにあるかを授業者が発表者のところに行って確認します。このような対応をすると、子どもたちは教師に対して発表するという意識しか持ちません。みんなに伝えようとしなくなります。
「どんな身分」から「どんな店」と教師が指示して視点が変わっていきます。なぜ、そこに注目する必要があるのか、そもそも何が目的なのか子どもたちはわからないまま引きずり回されます。典型的なミステリーツアーの授業でした。
江戸時代の暮らしを知るのなら、比較の対象があると考えやすくなります。今の暮らしと比べてもいいですし、過去に学習した時代と比べてもいいでしょう。教師に指示されたことをするのではなく、子どもたち自身が見つけよう、知ろうとすることを大切にしてほしいと思います。

2年生の授業は新卒の先生の国語でした。子どもたちのテンションが上がりやすい傾向にあります。授業者は子どもを制するためにテンションを上げて指示をします。子どもを見るのもチェックする視線です。例えば席の移動を指示すると、子どもはすぐにテンションを上げます。移動することしか指示していないので、それ以外のことは意識しないのです。チェックされないことは気にしません。「口を閉じて素早く」といったことも指示することが必要です。そして、できている子どもを固有名詞でほめることで、よい行動を広げるのです。
学習活動は、その目標と評価の基準が明確ではありませんでした。そのため、子どもたちはただ活動するだけになります。当然テンションは上がってしまうのです。

5年生の算数は中堅の先生の約数の授業です。自分の答を書いて見せることのできるノート大のボードを持たせています。前時の時間の復習で「8を割り切ることのできる数はどんな数?」と質問します。子どもたちは先ほどのボードに自分の答を書いて頭の上に出します。これは全員の考えを知るのにとてもよいアイデアだと思いました。「偶数」と書いてある子どもがたくさんいます。授業者にとって予想外の答だったようです。「8の約数」と答えてほしかったのですが、子どもにとってどう答えていいかわかりにくい発問でした。間違えた子どもは約数の定義ではなく、「8の約数はどんな数か」と問われたと思ったのです。約数の定義を問うのなら「どんな数?」ではなく「なんという?」と聞くべきだったのです。約数は数ではなく、そのような数の名前なのです。
授業者は、8の約数に1が入っていることに気づいて、1があるから偶数は間違いと言って次に進みました。予想外の答で落ち着いて対応できなかったのです。せめて、偶数と答えた子どもに「それってどういうこと」と聞くべきでしょう。子ども自身で間違いに気づかせて修正させたいところです。
約数の見つけ方で「ペアで見つける」という言葉が子どもから出てきました。教師はすぐに板書をしてから、子どもたちに理解したかをたずね、発表者に説明させました。板書をした時点で写す子どももいます。子どもはこれを受け入れるべきものとして認識しています。まずは、この言葉を全体で理解して共有することをするべきです。「それってどういうこと?」と問いかけて説明させ、納得した子どもにもう一度説明させる。何人にも説明させて、最後もう一度まわりと確認するくらいで、やっと全員が理解するのではないでしょうか。割る数と商がともに約数になることはそれほど自明ではありません。このことをていねいに確認したあと、割る数と商を線で結んで「ペアだね」と押させたいところでした。

もう一つの6年生の学級はベテランの担任で、算数の速さの授業でした。テンションが上がりやすそうな学級ですが、授業者はよくコントロールしているように感じました。笑顔をよくつくっています。
子どもの言葉を活かそうとする意識はあるのですが、どうしても自分で説明してしまいます。また、問題を解かせる前に、「これを使えばいいね」と教師が見通しを持たせてしまいます。「何を使えば解けそう?」と子どもに問いかけたいところです。
答を発表する場面のことです。勘違いをしてちょっとズレたことを言ってしまった子どもに対して、揶揄するような声が上がりました。ちょっと心配です。エスカレートしないうちにたしなめることが必要です。また、発言者が修正した時点でしっかりとほめて、揶揄されたことを打ち消すようにするとよいでしょう。

若手だけでなく、中堅からベテランまでが授業を公開してくれました。各年代層が積極的に授業アドバイスを受けようとしてくださる学校は、進歩も早い傾向があります。この学校も間違いなく大きく進歩すると思います。

授業研究については次回の日記で。