基本がしっかりとできていて、学ぶことの多かった授業
- 公開日
- 2014/10/14
- 更新日
- 2014/10/14
仕事
前回の日記の続きです。
授業研究は1年生の国語でした。今年異動して来たばかりの方です。
第一印象は、子どもたちの笑顔がとても多いことでした。学級経営が上手くいっている証拠です。授業者が子どもたちをよく見ていて、受容する態度にあふれています。雰囲気のよいのは当然のことかもしれません。
この日の授業は、今まで学習した自動車を比べる文章をもとに、はしご車の説明の文章を書く場面でした。
まず、廊下側の窓に貼ってある模造紙に書いてある、これまでに学習した文章を見せながら、車の「つくり」に関する修飾語の違いを見つけるクイズを出します。この日の授業は、はしご車の「つくり」について文を書くのですが、そのために修飾語を意識させようというわけです。子どもたちは素早く廊下側に体を向けます。子どもを指名すると、すぐにそちらに体を向けます。授業規律がしっかりしていることがよくわかります。
次に、前時で学習したはしご車の「しごと」を問いかけます。手の挙がらない子どもがいます。「全員手が挙がるといいね」と声をかけ、思い出せない子どもには手元にある今まで学習した車について書いたカードを見てもいいことを伝えます。とてもよい対応です。思い出せなければ調べればいいということをきちんと伝えています。
はしご車に何がついているかという問いかけに、「鏡」と答えた子どもがいました。子どもたちも授業者もよくわかりません。発言者は「教科書に載っていた」と付け加えます。すると子どもたちが一斉に教科書を開きました。とてもよい場面です。どうやらバックミラーのことを言っていたようです。そのことを全員が確認できたところで、「どの車にもついている」という声が上がってきます。授業者は鏡を「つくり」の説明に取り上げるべきかどうか子どもたちに問いかけます。入れないという意見が多いことを確認した上で、発言者に声をかけます。発言者は納得してくれました。授業者が子どもたち一人ひとりに寄り添おうとしていることがよくわかります。「はしご」「あし」「かご」「ホース」の4つが出てきました。
子どもたちにはしご車の動画を見せることを伝えます。子どもたちのテンションが上がります。「これは危ないな」と思いました。しかし、授業者は続けてはしご車に必要な「つくり」は何かを考えるように指示をしました。ちゃんと動画を見る目的を持たせたのです。子どもたちは体をしっかり前に傾けて真剣に見ています。見ていて気づいたことをつぶやく子どももいます。授業者は画面ではなく、ちゃんと子どもを見ています。子どもたちは最後まで集中を切らしませんでした。
続いて、はしご車の仕事に何が必要かを確認します。動画のはしご車にはホースはあるのですが活躍しません。ホースを入れるかどうかは意見が分かれます。一人の子どもがホースの必要性にとてもこだわっています。授業者は無理にこの子どもを説得しようとはしません。残しておくという選択をしました。ここでは、選ぶための基準が明確になっていないので、根拠を持って説得することは不可能です。正しい判断だと思います。4つの中から好きなものを2つ選んで書くことを指示しました。
いよいよ本時の主となる活動である文書を書くことが課題として前面にでてきます。途中で動画の再生がうまくいかなかったこともあり、時間が押しています。「つくりの文章の終わりはどうなっている」とたずねながら、これまで学習した文章に、つなぐための言葉「そのために」と文末表現「・・・があります。」「・・・が、ついています。」が使われていることを確認します。ちょっと誘導的です。文の構造を意識させるのであれば、これまでの文章に同じ言葉(表現)はあるかと問いかければいいでしょう。
これらの言葉ともの以外をマスキングする(隠す)紙を模造紙の文章に重ねて、隠れているところに何が書かれているか考えさせます。子どもたちに修飾する言葉を意識させるためです。印象付けるためにはなかなか面白いやり方です。ここがしっかり書かれているのが「(車)博士の文章」だと伝えます。子ども目線の言葉で目標を与えているのもなかなかです。子どもが「詳しく」「どんな」といった博士の文章を説明するつぶやきが出ます。授業者は「いいこと言ってくれたね」と拾うのですが、全体にきちんと共有することはしませんでした。時間がないので焦っていたのでしょう。子どもたちに「やれそう?」と確認して、「やれそう」と返事が返ってきたので、活動を開始しました。
授業者はすぐに気になる子どものところへ支援に行きました。子どもたちは素早く鉛筆を持ちます。やる気十分です。ところが、ほとんどの子どもの手が動きません。活動を始めてすぐに支援に行くのは注意が必要です。ほんの少しの間でいいので、全体の状況を確認するのです。30秒も見ていれば、このまま進めても子どもたちが書くのは難しいと判断できたと思います。活動を止めて、全体で試しに一文をつくってみるといった対応をすればいいのです。
授業者は、一生懸命あちこちに支援に行きますが、それではとても追いつきません。作業をいったん止め、ペアで助け合って「つくり」の文章を1つだけでいいので、完成させるように指示しました。しかし、そもそもほとんど手がついていないので子どもたちは何を相談していいかよくわかりません。完成できなかった子どもがかなりになりました。
この単元は何を学習するのが目的だったかを問い直す必要があるでしょう。説明文の入門です。説明文の構造、書き方といった形式を身につけることが主の目的だと思います。「そのためには」「どんな(働きをする)」「もの」「・・・があります。・・・がついています。」という構造を意識させることが大切です。子どもたちは、この構造を理解していたと思います。だから、すぐに取りかかろうとしたのです。しかし、「どんな」の言葉が出てこなかったのです。語彙が少ないこともその原因の一つだと思います。この単元の目的からすると、この修飾する言葉についての壁はもっと低くしておく必要があったのでしょう。動画を見ることの活用を含めて、授業の流れを見直さなければいけません。
この日の目標である「博士の文書」はどのようなものか、早くから意識しておくとよいでしょう。文章の構造の確認は書く直前でよいと思いますが、「詳しい」ということが「博士の文章」であることを、動画を見る前に押さえておくのです。「詳しい」ということは、文章のどこの部分かを子どもに確認し、「どんな」の部分であることを共有します。その上で、動画を見る目的を「どんなという説明の言葉をたくさん見つける」にするのです。動画を見た後、「どんな○○だった?」とできるだけたくさんの子どもに聞きます。特に板書も必要ないでしょう。子どもの頭の中に言葉が生まれればいいのです。その後で、文章を書かせればいいのです。
検討会での授業者の反省は、実に冷静に自分の授業を分析できています。私のアドバイスは必要がないと思えるほどです。
グループによる授業検討が行われます。この市ではグループでの授業検討が定着してきたようです。うれしいことです。
この授業のよい点がたくさん出てきます。また、子どもたちが文を書けなかったことについてどのようにすればよかったのか、よいアイデアがたくさん出てきます。しかし、どうしても視点が、「この授業」なのです。この授業から「他の授業」に活かせることや「共通の課題」に学びが広がっていかないのです。そのことが残念です。
私からは、皆さんが気づいたことをもとに、どのような視点で授業をとらえ、つくっていくといいのかを具体的な授業技術と共にお話ししました。限られた時間なので、私の一方的な話になったことが悔やまれます。この学校が目指している「つなぐ」ことを意識して、先生方の考えをつないで見せるべきだったと思います。
検討会終了後、この日授業参観した先生方とお話をしました。皆さんとても素直で前向きだと感じました。きっと大きく進歩していくことと思います。
真剣に聞いていただけるので、ついつい余計なことまで話してしまいました。とても楽しく、私にとっても学びの多い一日でした。
また、訪問する機会があることを願っています。