久しぶりの中学校で、子どもの様子が気になる
- 公開日
- 2014/11/07
- 更新日
- 2014/11/07
仕事
今週の初めに中学校で授業アドバイスをさせていただきました。今年度初めての訪問で、1、2年生中心に参観しました。
全体的に感じたのは、以前と比べて子どもたちの集中が落ちていることです。その原因の一つが、授業規律が緩くなっていることです。子どもたち全員が顔を上げていないのにしゃべる場面を目にします。グループ活動などでは子ども同士がかかわることはできるのですが、全体の場面では子ども同士をつなぐことをしない先生が目立ちました。数年前の状態に戻ったように思います。教師の異動も少なからずあったので、もう一度基本的なことを学校全体で確認することが必要だと思いました。
経験6年目の先生の英語の授業は1年生で、定冠詞の”the”を学習する場面でした。GDMを使った授業です。
前時の復習は”other” ”another”の使い方です。手に持ったペンの色の組み合わせを変えながら練習します、”One is red. Other is blue.” “One is red. Others are blue. Another is green.”というように子どもたちに説明させます。子どもたちは集中し、しっかり考えて答えます。個別に指名した子どもが答えられなかった時には、全体に答えさせてから再度言わせます。失敗で終わらせないようにしています。わからない子どもがあきらめずに参加していることが印象的です。
日本語で説明をせずに、”the”の使い方を理解させます。脚と足が4つずつの椅子、脚が2つで足が4つの掲示板、脚が1つで足が4つの椅子を使って練習します。”This is a leg of the seat.” “These are legs of the seat.” “These are the legs of the seat.” “These is the leg of the seat.”の違いを、脚を指で指定しながら言うことで考えさせます。子どもたちはどのような時に”the”が使われるのか一生懸命に考えていました。何度も繰り返すことで次第に理解していきます。ある程度理解できたところで、ペアで確認の練習をします。子どもたちはよくかかわれています。ここで、挑戦してくれる子どもを挙手で指名しますが、思ったほどは手が挙がりません。手が挙がらない子どもも、友だちの挑戦を一生懸命に聞いていました。
続いてドアについている窓を指さします。子どもたちは、窓の単語が出てきません。授業者が”window”を教えても、どう言えばいいのかわかりません。”That is the window of the door.”と言わせたかったのですが、状況を理解できていませんでした。ここは、まず”This is a door.”と何について説明するのかを理解させておくとよかったでしょう。今度は窓の数が違う戸の図を書いて練習させます。同じことを、場面を変えて練習することで、よくわからない子どもには理解する機会を増やし、わかった子どもには練習量を確保します。GDMのよさです。
ペアでの練習で、相手の子どもがしゃべってくれないために困っている子どもがいました。こういう時に助けてくれる相手をつくっておくとよいでしょう。
最後にワークシートを使って、英文を書きます。先ほどはしっかり口を開けていたのに、書けない子どもが目立ちました。英文を作れないのか綴りがわからないのかどちらなのか気になりました。答の確認の時に、授業者がすぐに英文を書きましたが、まず言えるかどうかを何人かを指名して確認したいところです。答を写すことにかかりきりで、友だちの発言を聞けない子どもが少し目立ちました。このあたりをどうするかが課題です。
子どもに対する表情が初任者のころと比べると、とても柔らかくなっていました。日本語が全くない、大人でも難しい活動ですが、授業者の受容的な姿勢のおかげで子どもたちがしっかりと参加したことに感心しました。
数学の初任者の授業は、多角形の内角の和の公式を考える場面でした。
授業者は、子どもを漠然としか見ていません。授業規律も徹底できていません。子どもの顔が上がっていないのに平気で説明を始めます。前時の復習で「鋭角」「直角」「鈍角」の確認をしますが、子どもが反応しません。わかっていないように見える子どもも、ノートや教科書で確認しようとしません。他人事のような態度の子どもが目立ちます。「鋭角は90°より小さい角」という子どもの説明に対して、「0°より小さい」ものは除くといった補足をします。「0°より大きくなければいけない」という意味で言ったのかどうかはわかりませんが、0°より小さい角すなわち負の角は中学校では扱いません。数学は曖昧さを回避するために用語の定義にこだわる必要があるのですが、こういった数学用語の曖昧さが随所に見られたことがとても気になりました。
基本的に一問一答で進んでいきます。教師が必ず説明するので、指名されなければ自分に関係ないと、友だちの話を聞きません。学び合いを進めている学校です。友だちの話を聞くことができていたはずですが、教師が求めないのでできなくなってしまったのでしょうか?とても気になります。
六角形の内角の和の考え方を個人で考えるように指示します。子どもたちは、自然に友だちと確認しています。相談することに慣れている子どもたちなので、あえて個人にこだわる必要がないのです。
子どもたちはいろいろと線を引いて考えますが、授業者は三角形に分ける方法を1つ発表させると、他の三角形に分ける方法は同じものとして取り上げません。また、三角形の内角を集めると、六角形の内角と過不足ないことの確認もしません。初めに結論ありきの説明です。四角形を2つに分ける方法も発表させますが、1つの頂点から他の頂点を結んで三角形をつくる方法がどんな多角形でも使えるよい方法だと教師主導で結論づけ、それ以上は扱いません。子ども自身に評価させないのであれば、自由に考えさせる意味はありません。アイデアを評価する力をつけなければ、問題解決はできるようになりません。解き方のパターンを覚えるしかなくなるのです。ちなみに、凹多角形までを考えると、内部の点から各頂点を結んだ三角形の内角の和から、中心の360°を引くという考え方の方がより汎用的です。星形多角形までを考えれば、外角の和をもとに考える方が本質的です。それなのに、教科書が異なる方法を取っていることの意味を考えてほしいと思います。
n角形はn−2個の三角形に分割できることを、具体例をもとに言わせますが、それはあくまでも予想です。いつでも言えることを中学生なりの論理で説明させることが必要です。教科書では、表を作りながら帰納的に考えさせています。五角形は四角形と三角形、六角形は五角形と三角形というように分割できることから、三角形が1つずつ増えていくことを押さえておく必要があるでしょう。もちろん1つの頂点から対角線を引くと、両隣の頂点以外と結ぶことになるので、n−2本引けることから演繹的に考えてもいいのですが、ここでは帰納的な考え方に触れさせておきたいところです。
公式を出したところで、大切だから覚えておくようにと言います。説明なしで使っていいのが公式です。実際にはn−2個の三角形に分割できることから作ればいいのです。大切かどうかは、子どもたち自身で評価すればいいのです。
内角の和が900°になるのは何角形かという演習問題で、180×(7−2)=900から七角形という解答がありました。授業者は本人に確認することなく勝手に「地道にやったんだね」と決めつけて、大きくなったら大変だから、方程式で解くのが一番いいと結論づけました。しかし、900を180で割って三角形が5個だからと考えたのかもしれません。というか、そっちの可能性の方が高いように思います。また、必要条件と十分条件の考え方を意識することも大切です。「7を入れると条件を満たすから七角形は答になるね。それ以外はあり得ない?」といった、やり取りをしてもいいでしょう。
常に、教師が考える説明や解き方を子どもに求めています。子どもたちは、教師の求める答探しをするようになってしまいます。教え込みの典型になっていました。
授業者からは、どのような授業を目指すのかのという具体的なものが感じられませんでした。他の先生の授業を見たり、本で学んだりしながら、自分の目指す授業像を見つけようとしてほしいと伝えました。
もう一人の経験6年目の英語の先生の授業は、2年生の相対的な位置の表現を活用する場面でした。
位置を表わす前置詞の復習から始まります。一部の子どもがよい反応をしますが、反応をしない子どもが目立ちます。授業者は反応をすぐに拾って授業を進めていきます。反応しない子どもはわかっていないのかと思ったのですが、どうもそうではありません。この場面で参加する意思がないのです。わかっているからいいと思っているのか、授業者との人間関係の問題なのか、テンションを上げて参加する子どもと参加しない子どもの温度差が気になります。
この日の主課題は、位置を表わす”near” ”around” ”in front of” “next to” “by” “between”などを使って建物の位置を表現することです。2人ずつのチームで地図の決められた位置に建物のカードを置いて、互いに相手がどこに置いたかをあてあうゲームを行います。”Is there ○○ in front of ××?”というように聞いて、”Yes”か”No”で答えてもらいます。子どもたちは、どうしても勝負にこだわります。一見活発に見えますが、英語を話す、聞くといった活動量はあまり多くありません。子どもたちの目標がゲームに勝つことになっていることも問題があります。英語としての目標をどうするかが課題です。
例えば、次のようなやり方が考えられます。正解ならば、”Yes, there is ○○ in front of ××.”、不正解なら、”No. It is near the △△.”というように答えさせて、いずれにしても正しい位置がわかるようにして、一つずつ埋めていきます。間違えれば相手の言う正解をきちんと聞くことが必要になり、会話が成り立っていきます。正しく聞き取れたかどうかを相手が正しい位置に建物を置いたかで判断し、もし間違えていればもう一度英語で伝え訂正するように求めます。全部を正しく置ければ交代です。目標をグループ全体で何回やれたかにすれば、互いに協力し合う関係になります。できるだけポジティブなかかわりをつくるような活動にするとよいと思います。
この日は、私に次の予定があったため初任者にしかアドバイスができませんでした。来週訪問する時に、他の2人とは話をする予定です。
この日見た子どもたちの様子に気になる点がありました。次回の訪問の時には学校全体で何が起こっているのかしっかりと見極めたいと思います。