第4回・グループウェアの活用で…
【第4回】グループウェアの活用で学校が変わる
—小牧中学校との共同研究発表を振り返って
去る10月11日、日本教育工学会第19回全国大会において、「ほりたん」こと堀田先生が共同研究されてきた愛知県小牧市立小牧中学校における「学校用グループウェアの開発と実践」についての研究発表が行われました。
小牧中学校では、ITによる教育の質の向上と業務の効率化を目指して学校用グループウェアを開発・運用し、3年間にわたって実践を繰り返してきました。その結果、
- 職員会議や打ち合わせの時間が短縮され、時間的なゆとりが生まれたこと。そしてその時間を教師の研修などにあてることができるようになったこと。
- 情報の二次、三次利用により業務の効率化が図られたこと。さらに、情報を共有化することで、個々の生徒への理解が深まり、教育の質の向上を図ることができたこと。
- 情報の一元化が進み、多くの情報を簡単に取り出し、出力することができるようになったこと。それにより、年間20ページを超える通知表の発行が可能となり、保護者への豊かな情報提供ができるようになったこと。
など、さまざまな改革が行われ、小牧中学校が大きく変容したことが報告されました。
今回は、その研究発表について堀田先生にお話を伺いました。
今回は、その研究発表について堀田先生にお話を伺いました。
************************************
Q.小牧中学校の研究発表では、かなり現場の生の声が聞けたのではと思います。発表された神戸先生は、会の雰囲気からすると、ちょっと「異色」だったかなあという感想をもたれたようですが。
しかし学会でも、現場の現実的な問題を、具体的に研究した上で、ソフトウェアなどを現場で運用するときの運用の仕方や効果について研究するといったことが次第にポピュラーになりつつあります。こうした流れの中で、現場の生の声を直接聞くことができた小牧中学校の発表は、学会にとっても、たいへん貴重だったと思います。今は残念ながら、こうした発表が少ないという意味で「異色」だったのですが、今後このような発表が増えてくることを期待しています。
Q.質疑応答でも、他の発表と違って、具体的なよい質問が多かったように思います。それだけ、現場での実践が注目されたということでしょうか。
学会側にも、学校用グループウェアに対する期待だとか、これからちゃんと研究していかなくてはいけないというニーズやシーズがあるので、注目を集めたのだと思います。よい質問が多かったというのは、その現れだと思います。
特に具体的な機能に関する質問や、運用、体制、管理職の指揮、学校がどう変わったのか、教師がどう大変だったのか、楽になったのか、という質問が中心となったのは、現場のニーズや運用のミソの確認をしているのではないかと思いました。
Q.実は神戸先生は、実際に他の方々の発表を聞かれて、「現場と遠いな」ということを感じられて、急遽、現場に近い発表に変更したそうです。
「この機能とこの機能は教員の意識を変えるが、この機能はそうでもない」
「この機能とこの機能がとてもよく定着している」
「この機能は定着していないが、あったほうがよい」
「この機能はあまり必要ない」
「この機能を入れると、よい意味で現場の運用を変えざるを得ない」
など、それぞれの機能と使う側の仕事の仕方の関係を整理し直して、もう1回発表するとよいと思います。研究している人たちに現場を知ってもらうという意味で、本当に貴重だと思うからです。
Q.小牧中学校のような現場に近い発表が増えてくると、よりよい学会になるのではないかと思います。
<注記>今回は、発表者の10%が現場の先生でした。
Q.セミナーやフォーラムも、一般の学校に小牧中学校の実践を知ってもらう、よい機会ですよね。
ありがとうございました。
(2003年12月15日)
●堀田 龍也
(ほりた・たつや)
静岡大学情報学部情報社会学科助教授。学校現場での情報教育の授業研究、カリキュラム開発、情報教育教材の開発などにかかわる。大学の研究室にいる時間よりも、学校現場に出かけていたり、政策会議に参加したりしている時間の方が長い。