第3回・学習に向かう学級の姿勢
★このコラムは、日本初(?)の教育コンサルタントとして10年前からご活躍中の大西貞憲さんから、授業を見るための眼力が高まるノウハウをインタビュー形式で学ぶものです。
【第3回】学習に向かう学級の姿勢
大西貞憲
(授業を見るプロ)
玉置崇
(インタビュー)
そこでご質問です。大西さんは学級の学習に向かう姿勢は、どこを見て 捉えているのでしょうか。コラムを読む方にとっては、担当学級の学習に向かう姿勢チェックになると思いますので、具体的に挙げていただけませんか。
向山先生と比較されても困ってしまいますが、私なりの視点を少しお話します。
教師の発問や指示に対しての子どもの反応
は大切なポイントになります。一見落ち着いていて、教師に注目して、学習に対して前向きに見える学級でも、教師の発問に対して
あまり反応しない
ことがあります。子どもたちは発問に対して何か考えているのかもしれませんが、姿勢や表情に大きな変化が見られないのです。そういう学級に限って、発問内容や課題を
教師が板書すると一斉に鉛筆を持ちノートに写し始め
ます。よく躾けられているということなのでしょうが、学習に対して
受け身
であると感じることが多いのです。人は何かを考えているときにはとっさに反応できません。
子どもたちは、次に教師は何をするか、どんな指示があるかに意識を向けている
ということです。もちろん、何も考えず、また教師にも注目していないよりはずっとよいのですが、自分の問題として考えているときは、たとえ板書は必ずノートに書くように指示されている学級であっても、決して一斉には動かないのです。
積極的に学ぶ姿勢が育っている学級
では、発問に対して子どもが必ず
何らかの反応や活動
をします。たとえば復習的な内容を問うのであれば、わかっている子どもは挙手するでしょうし、わかっていない子どもは教科書やノートを開いて答えを調べようとします。周りの子どもに尋ねるかもしれません。
ただ教師から発せられる正解を待とうとはしない
のです。
教師からの働きかけ、友だちの発言等に対して、
個々の子どもたちがそれぞれに反応をする学級は、学習に対する姿勢が育っている学級
だと思っています。些細な反応でよいのです。小さくうなずいたり、首を傾げたり、発表者の方に体を向ける、教科書やノートをちょっとめくってみたり、隣の声にそのことに関してそっと話しかけたりする。そんな姿があちこちで見られることが大切です。また、そういう学級では、
子どもたちの反応に対して、間違いなく教師も反応
します。
「今うなずいてくれたね。何がわかったの?」 「今うなずいたのは、・・・さんの意見に賛成ということ?」 「・・・さん。何か困ったことあるの?」 「ノートを確かめている人がいるねぇ」 「相談している人がいるね。相談してもいいよ」
こんな言葉がよく聞かれます。
子どもたちの学習に対する姿勢は、間違いなく教師の姿勢が育てる
ものだと思います。
東京大学の佐藤学さんは授業は必ず前から見ますが、教師の発問に対する子どもたちの反応を見るには、前から見るのが最適ですよね。今でも研究授業の時には、椅子が後ろにずらっと並べてある学校があります。またその椅子に1時間中、ずっと座っている指導主事がいたりして・・・。これ以上、話し出すと脱線してしまいますので、この話題はこのあたりにしておきましょう。
(2009年8月10日)
●大西 貞憲
(おおにし・さだのり)
愛知県で公立中学・高校教諭を経て、民間企業で学校向けソフト開発に携わる。2000年教育コンサルタントとして独立。現場に出掛けての学校経営や授業へのアドバイスには「明日からの元気が出る」との定評があり、愛知県を中心として、全国の小中学校や自治体から応援を求められている。また、NPO法人「元気な学校を支援し創る会」理事として「教師力アップセミナー」「フォーラムin東京」を通して実践に役立つ情報の共有化・見える化に注力している。
●玉置 崇
(たまおき・たかし)
1979年、教員生活スタート。小学校教諭3年、中学校教諭16年、教頭6年、校長3年、2007年度より愛知県教育委員会義務教育課へ。ICTを活用した授業や学校経営で実績があり、文部科学省発行「教育の情報化に関する手引」作成委員の一人。大学時代には落語研究会に所属。今でも高座に上がりご機嫌をうかがっている。「やってみなきゃ分から ない」をモットーに、「思いついたら、すぐ動き出す」ところもあって、失敗は数知れず。そのくせ、ちょっとしたミスで、いつまでもくよくよ悩むタイプ。眠れぬ夜も多い。