第23回・大西流・板書の価値付け
★このコラムは、日本初(?)の教育コンサルタントとして10年前からご活躍中の大西貞憲さんから、授業を見るための眼力が高まるノウハウをインタビュー形式で学ぶものです。
【第23回】大西流・板書の価値付け
大西貞憲
(授業を見るプロ)
玉置崇
(インタビュー)
板書は授業の結論やまとめを見やすく整理するだけではなく、その過程を見えるようにすることが大切であると思います。そこで、私は板書と子どもの考えが深まる過程との関係に注目します。
考える力をつけるために大切にしたいのは、結論ではなくその過程です。結論が導き出される過程で、根拠となる事実やいろいろな気づきが発表されます。これらをきちんと整理することで、考えが深まっていきます。子ども自身でメモをとり、整理しながら思考を深めることが理想ですが、これはなかなか難しいことです。そこで、板書を活用することになります。ポイントとなるのは単に発表されたものを順番に板書するのではなく、事実と気づきの因果関係を明確にしたり、似たものをグルーピングしたりするなどの整理をすることです。関係を意識して書く場所を変える、因果関係を表す記号やグループの色分けにルールをつくるなどの工夫がされている板書は、思考の過程が明確になり、子どもたちの新たな気づきにつながります。また、いつも教師が考えを整理して板書するのではなく、「この意見はどこに書けばいいと思う」「この事と関係がありそうなものはどれかな」などと問いかけながら、子どもと一緒に板書をつくっていくことも、子どもに思考を促し整理する力をつけることにつながります。
もう一つ意識してほしいことが、板書とノートとの関係です。教師が板書を始めると何も考えずにそのまま写し、きれいなノートができたことで自己満足しているようでは困ります。そうではなく、写す時にも頭を使うような板書を目指すことです。話し合いが止まった時に、板書を写すことで今までの過程を再度確認させる。結論はあえて書かずに、板書を参考に自分の結論をノートにまとめさせる。まとめを整理しながら隙間を空けて板書し、子どもに埋めさせる。いろいろな工夫をすることで、板書を媒介として子どもの考える力を養うことができます。
ノートに保存しておく結果だけを板書するのではなく、
子どもたちが考えを整理し深めるための材料として板書を活用
してほしいと思います。
「子どもと一緒に板書をつくっていく」 という考え方は、これまで持っていませんでした。あらためて授業では、ありとあらゆる場面で子どもを主体にできるものだと思いました。やはり何事も固定的に見てはいけませんね。
ありがとうございました。
(2010年6月14日)
●大西 貞憲
(おおにし・さだのり)
愛知県で公立中学・高校教諭を経て、民間企業で学校向けソフト開発に携わる。2000年教育コンサルタントとして独立。現場に出掛けての学校経営や授業へのアドバイスには「明日からの元気が出る」との定評があり、愛知県を中心として、全国の小中学校や自治体から応援を求められている。また、NPO法人「元気な学校を支援し創る会」理事として「教師力アップセミナー」「フォーラムin東京」を通して実践に役立つ情報の共有化・見える化に注力している。
●玉置 崇
(たまおき・たかし)
1979年、教員生活スタート。小学校教諭3年、中学校教諭16年、教頭6年、校長3年、2007年度より愛知県教育委員会義務教育課へ。ICTを活用した授業や学校経営で実績があり、文部科学省発行「教育の情報化に関する手引」作成委員の一人。大学時代には落語研究会に所属。今でも高座に上がりご機嫌をうかがっている。「やってみなきゃ分から ない」をモットーに、「思いついたら、すぐ動き出す」ところもあって、失敗は数知れず。そのくせ、ちょっとしたミスで、いつまでもくよくよ悩むタイプ。眠れぬ夜も多い。
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