第17回・続々:グループ活動の…
★このコラムは、日本初(?)の教育コンサルタントとして10年前からご活躍中の大西貞憲さんから、授業を見るための眼力が高まるノウハウをインタビュー形式で学ぶものです。
【第17回】続々:グループ活動の見極め方
大西貞憲
(授業を見るプロ)
玉置崇
(インタビュー)
グループ活動後の話し合いで大切なことは、子どもたちから何をどう引きだし共有するかです。子どもたちが互いに聞きあい、学び合うために、正解や結論そのものではなく、子どもたちの考えやその過程を引き出し、互いに共有させることが重要です。
教師が「わかったことを聞かせてください」と発問する場面によく出会うのですが、この「わかった」という言葉は注意が必要です。「わかった」は正解や結論を求めているニュアンスが強いため、考えが途中で止まっていたり、まとまっていない子どもは話し合いに参加しづらくなります。「どんなことを考えたか」「どんなことに気づいたか」と聞くことで、意見が言いやすくなります。「グループでどんな意見が出た?」「友だちの意見でなるほどと思ったものを聞かせて」と自分の考えでなくてもよいと伝えることで、多くの子どもが話し合いに参加できるようになります。
また、子どもの発言は、どうしても言葉足らずになりがちです。このようなとき、教師が「いいこと言ったね、○○さんの言ったことはこういうことだよ」と勝手に解説を加えてしまうことがあります。これでは、子どもたちは友だちの発言ではなく教師の説明を聞けばよいと考え、子ども同士で聞き合おうとする姿勢を崩してしまいます。大切なことは、教師が注意深く聞く姿勢を見せることです。もし、子どもの発言が言葉足らずでわかりにくかったり、他の子どもが理解できでいないようであれば、「それってどういうことかもう少し聞かせて」と聞き返したり、「○○さんの言ったことが分かった人いる。説明を足してくれる?」と子ども同士をつなぐようにするのです。こうすることで、学級全体に友だちの話を聞こう、理解しようとする雰囲気が作られ、かかわり合いの中で子どもの考えが深まり広がっていきます。
もうひとつ気をつけたいのは、子どもたちが見つけたことや、考えを発表したときに、「何を調べたの」「どこでわかったの」と資料や考えの根拠を具体的に聞くことです。「・・・に書いてあります」「資料の・・・で見つけました」と具体的になったら、「みんな見つかったかな。じゃあ、○○さん読んでくれる」「何と書いてあった。納得した?」と他の子どもたちに必ず確認させ、全体で共有させるのです。考えや意見の根拠をきちんと共有させることで、子どもたちは調べ方や考え方を身につけていきます。
時には、どうしても子ども同士の考えがうまくつながらなかったり、いろいろな考えが出てまとまらなくなったり、逆に意見が出なくなることがよくあります。このようなときには、教師が無理やり考えを一つにまとめようとしたり、意見を引き出そうとしたりせず、一旦集団での追究をやめてもう一度グループに戻します。小集団にすることで、意見が整理され、じっくり考えることができるので、再び子ども同士がつながっていきます。
つまり、教師が子どもの考えを無理やり誘導してまとめたり、これが正解であると解説したりするのではなく、子ども同士のかかわり合いの中から、互いの考えやその過程を理解しあい、共有することで学び合いにつなげることが大切です。教師はそのための触媒となるのです。
「○○さんの意見から、いろいろな考えが出てきたね」、「○○さんの考えが聞けて良かったね」こんな言葉が生まれてくる教室にしたいですね。
(2010年3月8日)
●大西 貞憲
(おおにし・さだのり)
愛知県で公立中学・高校教諭を経て、民間企業で学校向けソフト開発に携わる。2000年教育コンサルタントとして独立。現場に出掛けての学校経営や授業へのアドバイスには「明日からの元気が出る」との定評があり、愛知県を中心として、全国の小中学校や自治体から応援を求められている。また、NPO法人「元気な学校を支援し創る会」理事として「教師力アップセミナー」「フォーラムin東京」を通して実践に役立つ情報の共有化・見える化に注力している。
●玉置 崇
(たまおき・たかし)
1979年、教員生活スタート。小学校教諭3年、中学校教諭16年、教頭6年、校長3年、2007年度より愛知県教育委員会義務教育課へ。ICTを活用した授業や学校経営で実績があり、文部科学省発行「教育の情報化に関する手引」作成委員の一人。大学時代には落語研究会に所属。今でも高座に上がりご機嫌をうかがっている。「やってみなきゃ分から ない」をモットーに、「思いついたら、すぐ動き出す」ところもあって、失敗は数知れず。そのくせ、ちょっとしたミスで、いつまでもくよくよ悩むタイプ。眠れぬ夜も多い。
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