研究会日記

【フォーラム記録】パネルディスカッション1

公開日
2011/03/27
更新日
2011/03/27

活動記録

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「愛される学校づくりのための学校広報と学校評価」
コーディネーター  教育コンサルタント  大西貞憲
パネリスト           
津市立倭小学校    中林則孝
新城市教育委員会   小西祥二
新潟市立亀田東小学校 鷲尾建仁

大西:このパネルディスカッションでは、3人の実践を通して「評価をうまく使って愛される学校づくりになるか」ということをつきつめていきたいと思います。
まず、中林先生お願いします。

中林:相互理解を深めるための学校評価について発表します。
アンケートは保護者が学校に意見を言える数少ない機会、それをどう生かすか。
保護者の意見は個人情報等を除きすべて公表する。
公表のポイントは保護者のアンケート結果を1週間以内に公表すること。
そして、校長の顔の見えるコメントをいれること。
すぐに回答を出すことによって、他の保護者の意見を真剣に読み、答える目が鍛えられる
年に1度だけの学校評価ではなく、年4回の小刻み評価を実施。
「学校評価アシスト」による回答と紙での回答を併用した。
アンケートに表れる学校への批判こそチャンス。
批判意見に真摯に答えることで学校への信頼を高めることになる。
(例)「学校便りは資源の無駄」「組体操が見たいという意見」
ピンポイントのアンケートだからこそ保護者は具体的に答えることができる。
具体的な批判については真摯に答えることができる。

大西:素早いレスポンスや、聞く耳をもつことで相互理解が深まるという主張でした。
ところで、小刻み評価の対象は行事が主ですが、学校の基本である授業については聞かなくていいのですか?

中林:授業については職員との人間関係ができてからと考えている。

大西:本当は聞きたいのでは?

中林:聞くまでもなく、私が分かっている。(爆笑)

大西:次に小西先生、お願いします。

小西:学校ホームページと学校評価の連動について発表する。
学校評価というとアンケートの集計に多大な労力を使うというイメージがあった。
そこで、学校ホームページによる情報提供と連動した、組織的・継続的な評価を工夫した。
まず、アンケート機会を増やすことにより自己評価の質を高めることを考えた。
授業公開など、評価対象を明確にして参加者から直接評価を受ける。
パソコン室を開放し、ウェブ上のアンケートシステムから回答を得る。
アンケート項目ごとに学校の取組を紹介するホームページ記事へのリンクをはり、保護者に回答をするための根拠を示す。
質問には共通項目も設定することにより、異なる行事間で差異や特徴を調べる。
(例)「学校目標に迫る取組か」「家庭との連絡は図れているか」
結果は即時フィードバックする。
このように、学校ホームページの記事を二次利用して根拠情報を示すことにより、評価の機会があらためて学校を広報する機会ともなった。

大西:多くの評価機会に同じことを続けて聞くという取組でしたが、何か発見はありましたか?

小西:「子どもたちはよく発言した」という質問項目に対して、教員から「今日の授業は図工だった」という苦情が出たことがあった。教員は数値さえ高ければいいと思う傾向がある。

大西:なるほど、評価は教員にとってプレッシャーになる。
ところで、お二人に共通することは、学校便りやホームページで多大な情報を発信していらっしゃる。マスコミの情報だけだと、たとえば男性教師は生徒に手を出すことが多い(笑い)などと誤解を招くこともある。だからこそ学校の全うな情報を出し続けることが大切だと思いました。
続いて鷲尾先生お願いします。

鷲尾:本校は小刻み評価ではなく、アンケートは年1回12月に実施する。
その際、問題となるのが質問項目の意味。
例えば「思いやりの心を育むようにしていますか」では、どんな子供の姿が「思いやり」なのか分からない。このままではあいまいな評価・記述になってしまう。
こんなとき、ホームページの記事が有効な判断材料となる。
スクールウェブアシストで、キーワードによる集約・要約機能を利用して、年間およそ2000件にのぼる記事を評価の項目ごとに具体的な材料としてより分ける。
それを職員で分担し、評価の根拠となる記事を抽出する。
抽出した記事(写真とブログの要約)を印刷してアンケートに添付する。
こうした取組が保護者の啓発になる。広い視野で教育活動を見るようになるし、ホームページ閲覧の動機づけにもなる。
また、教師の学校運営への参画意識の向上にもつながる。特に、若い教師にとって、私のやっているこの活動が学校を動かしているのだという自信に結び付く。

大西:3人のご発表を聞いていると、評価よりも発信が大切というコンセプトを感じます。これは、保護者の学校を見る目を信用していないという前提ですか?(笑い)

小西:きっと保護者は自分の子どもしか見ていない。学校が全体としてどう取り組んでいるかは知らない。

中林:信用するもしないも情報を出さなければ始まらない。保護者の情報だけだと、学級評価や担任評価になってしまって学校評価にならない。

鷲尾:保護者の目を鍛えるという意味でも、教育活動の意義を伝える必要がある。

大西:親が学校を見ていないという話でしたが、職員はどうですか? 学校を見ていますか?

鷲尾:記事を抽出する作業そのものが職員の意識の啓発になっている。職員で教育活動の意味を共有できる。

大西:中林先生の学校では、学校評価と職員のかかわりはいかがですか。校長の顔はやたら見える学校だと思うのですが?(笑い)

中林:校長の仕事は、それぞれの職員の仕事を価値づけて他の職員や保護者に知らせること。こうすることで職員も自己評価ができる。そのために、私はどの授業にもカメラを持って入っていく。職員は本当はいやなんだけれども(笑い)、最近は慣れてきた。

大西:「ソーラン」ではなく「組体操」がいいという評価を職員はどう受け止めているのですか?

中林:それははっきり言って実践者にはショックだったと思う。一生懸命指導してきただけに。だからこそ、校長である私が答えることに意味がある。飲み込めない評価をどう受け止めるか、校長としての責任と判断で説明しなければならないときもある

大西:かっこいいですね(笑い)。それは、保護者にとっては、学校は私たちをある方向に持っていこうとしているという批判的な見方につながりませんか?

小西:アンケートをするときに、それぞれの教育活動を価値づけた根拠情報として出す、あるいはありのままの授業を見ていただく。学校から発信する情報も意図を正しく伝わるようにしようということであって、保護者を変えようということではない。

大西:そういう中で学校の思いは保護者に正しく届いていくのでしょうか。

中林:担任をしていたときに、ある親は「宿題が多いから困る」と言い、ある親は「もっと増やしてくれ」と言うことがあった。このことにどう答えていくか。問題は量ではなく宿題の中身だ。漢字のようなものでは繰り返し練習しないと定着しないから家庭でもちゃんとやってくださいなど、こういう信念でやっていますと説明していく必要がある。ポリシーがしっかりあればどんな評価にも答えられる。

大西:なるほど、すると逆にポリシーがないと聞くのもつらいということになりますね。
そんな中でアンケートの意図は一般職員にはどう伝わっているのでしょうか。きちんと伝わっていますか。

鷲尾:それは伝わりにくいですね。

大西:多くの学校がシステムとして学校評価を行っている。そのシステムに乗っかっていく過程で次第に認識が深まるのかも知れませんが、学校の意図ってどこまで伝わるものなのでしょうか。たくさんの情報発信が保護者に届いているかどうか検証する手立てはありますか? 伝わっているかどうかの手ごたえはどうですか?

中林:大西さんもたくさんの本を書いておられる。その反応をいちいちリサーチできますか?(笑い)
広報というのはリサーチできない。体系的により分かりやすく学校のことを伝えようとするのですが、その受け止め方は受け止める側の自由です。
私は学校通信を読んでくれる保護者が2分の1でも3分の1でもいい。その中で5人でも10人でも強力な応援団になってくれれば、あとの人はおまけ(笑い)でもいい。
そこが、広報とコミュニケーションの違いだと思う。

鷲尾:ホームページもすべての親が見てくれるわけではない。ほんの一にぎりでも応援してもらえる親が増えたらすごくやった価値がある。ホームページを見るというのは、自分の意思でのぞきに行こうという行為ですから。

小西:いろんな媒体で根拠情報を出し評価に生かしていく。悪い評価にも答えていくことで親は「学校に伝わった」と納得してくれる。学校のよさを出し続けていくことで学校の取組を意識してもらうことが大切ではないだろうか。

大西:なるほど、伝わる人には伝わる、伝わらない人には伝わらないけれども、少しでも納得してくれる人が増えることが大切。決して特効薬はないということですね。
最後に会場からのつっこみや、何か質問のある方があればどうぞ。

参加者:香川県高松市から来ました。今朝4時起きで車で来ました。うちの校長は大変理解があって、ブログで記事を更新したいと言ったら許可してくれた。しかし、ある時「ブログって何?」と聞かれた。理解はあったが技術については全く知らなかった。説明はしたがよさを十分に理解してくれてはいない。そんな中で、職員間にも外にもなかなか広がらない。もっと閲覧者も増やしたい。どうすればいいか。

鷲尾:私ははじめに自分があこがれる先生を味方に付けた。パソコンの知識はないが発言力のある女の先生。いつも記事を校長に見せる前にその先生に見せていた。そのうちその先生が他の教師に「ほら○○先生、この前こういう実践やったじゃない。あれ載せてやったら。」と言ってくれるようになって、だんだん広がっていった。

大西:なるほど、この人を落とせばという人がいるものですね。
旗振る人が味方をどのように増やすかが大切なようです。
愛される学校づくりは、学校を愛する人を一人ずつ一人ずつ増やす取組なのかもしれません。
そのために伝えたいことを伝えること、相手の思いを受け止めること、そして、発信量の多さが大切なようです。
発信せずに評価をしても、期待できるような効果はないということですね。
最後にパネリストの皆さんから感想を一言ずつどうぞ。

小西:保護者の閲覧を増やすには、何でもいいので毎日更新すること、自分の子どもの姿が見れるように発信すること、遠足などのリアルタイムの発信をすることが効果的です。

中林:ブログの意味も分からない校長が発信を許可したことは貴重です。
記事は自分の自己満足でいい。具体例をリアルに書く。写真には気を付けるといいでしょう。
校長はきっと喜びます。わけがわからなくても発信の中身は分かりますから。(笑い)

鷲尾:今日は新潟から来てよかった。有意義な話し合いができました。