【刈谷市立小高原小】季節外れの卒業式
- 公開日
- 2017/05/12
- 更新日
- 2017/05/12
ちょっといい話
「先生、ちょっといいですか?」…女の子二人が何か相談したい様子で話しかけてきた。友人関係のトラブルの相談かと思って、二人の表情を見ると、そんな雰囲気ではない。「Aさんが転校するでしょ。だから、みんなにメッセージを書いてもらいたくて。もちろんAさんには内緒で。それを私たちがやっていいですか?」そんなさわやかな話であった。Aさんは11月で転校する予定であり、大切な仲間との別れに、何かできないかと考えていたのだ。私自身も、いつクラスのみんなに手紙を書いてもらうか時期を見計らっていたのだが、まさか子どもたちからそんな提案があるとは。思わずにっこりし、二人に任せてみることにした。
二人の提案はこれだけではなかった。「先生、お別れ会ではなく、一緒に卒業式を迎えられないから、みんなで卒業式をしてあげたい。だから、先生にAさんの卒業証書を書いてほしいんです。もちろん、先生の手書きで」この言葉と一緒に、色紙が手渡された。転校生へのお別れ会の経験は何度かあるが、卒業式とネーミングするとは。子どもたちの思いの強さや発想の豊かさに驚かされ、同時に、心があたたかくなった。私はそんな思いに応えようと丁寧な字で卒業証書を書いた。それを二人に渡した時のうれしそうな顔は今でも心に残っている。
そして、迎えたAさんの卒業式。二人の進行のもと、ゲームで盛り上がり、Aさんの笑顔がたくさんあった。後半、クラス一人一人からのメッセージやAさんからのメッセージの場面になると、徐々にみんなの目から涙が。最後の歌のプレゼントでは、クラスみんなが号泣。Aさんの口からは何度も何度も「ありがとう」が聞こえてくる。号泣するクラスの子たちを見て、私の胸も熱くなった。Aさんは、校門まで見送られ、その日を最後に転校、いや、卒業していった。
こうして、ちょっと季節外れの卒業式は、子どもたちの力で、とても素敵な式となった。