【刈谷市立雁が音中】僕で良かったら走りますよ
- 公開日
- 2016/02/22
- 更新日
- 2016/02/22
ちょっといい話
体育大会の本番。1500m走の選手が、足をけがして出場できなくなった。出場しなければクラスに得点は入らない。しかし、誰もが1500mを走れるわけではなく、代役を立てづらかった。生徒に代役になれる子はいないかと聞いても、なかなか首を縦にふる生徒は少ないだろうと思っていた。そんな矢先A君が「先生。僕で良かったら走りますよ」と言い出した。私はつい「1500mだぞ。いきなり走ってもよい成績は難しいぞ。それでもいいのか」と言った。そんな私にA君は「先生。僕は大丈夫です」と言うのである。私は動揺したが、A君の言うとおりに大会本部で選手の変更を行った。
いよいよ1500m走が始まった。スタートして1周目でA君は最下位になった。まだ3周もある。最初は笑顔で走っていたA君の顔が、徐々に曇っていく。あごは上がり、ふらつき始めた。それでも前へ前へと走っていく。そのとき、ひときわ大きな応援がスタンドから聞こえてくる。クラスの仲間からだった。これまでの応援練習とは比べものにならないような大きな声、そして一体感のある応援だった。A君はふらつきながらもゴールした。A君がクラス席に戻ると、惜しみない拍手がクラスの仲間から送られた。
翌日の日記帳には「A君の走りに感動した。僕は走るのが遅いから、恥ずかしいと思って手を挙げられなかった。A君のようにクラスの仲間のために行動できる人になりたい」「新記録が出たり、リレーで盛り上がったりしたけど、A君の走りが一番感動した。クラスの一体感も感じた。次の行事でもこの一体感を大切にしていきたいと思う」というコメントにあふれていた。
A君に後日、改めてなぜ立候補したのか聞いてみた。するとA君は、「僕だって走りたくはなかったけど、誰かが嫌な思いをするのも嫌だったから、立候補しました」と答えてくれた。A君の優しさや勇気は、クラスの仲間に大切なことを教えてくれた。