モラルBOX日記

【豊田市立幸海小】 マラソン大会

公開日
2013/01/15
更新日
2013/01/15

ちょっといい話

「あ〜あ、走りたいなぁ。」
 昭一君はそっとつぶやきました。

 昭一君の学校では、毎年冬になると、耐寒駆け足訓練とマラソン大会を実施します。
 昭一君は体を動かすことが大好きな小学六年生の男の子で、これまでは毎年耐寒駆け足訓練でもマラソン大会でも、いい結果を残してきました。しかし、今年は走ることができません。少年野球の試合で両足首を痛めてしまい、しばらくは運動をしないようにと医者から止められたのです。
 六年生の昭一君は、小学校最後のマラソン大会を優勝で終わりたいと思っていました。それだけに、走れないのはとても残念でたまりません。でも、お母さんも担任の先生も「今、無理をしたら、マラソン大会には出場できなくなるよ。」と、言います。そこで、昭一君はがまんをして、こう考えました。
「よし、駆け足訓練は見学しよう。足さえ良くなれば、マラソン大会では優勝がねらえるんだ。」

 そして、マラソン大会の当日。昭一君は見学者の席に座っていました。足の具合は思ったより悪く、参加を許可してはもらえなかったのです。昭一君は「あんなにがまんしたのに」という気持ちをおさえながら、大会が進んでいくのを見つめていました。
「六年生、用意、」 パーン!!
 最後のレースがスタートしました。みんながいっせいに走り出し、門から外のコースへと向かいます。昭一君は最後の子が門から出ていくまで、じっと見送りました。
 それからしばらくの間、話し相手もなく、見学者の席に座っていました。すると、遠くから声が聞こえ、だんだん近づいてきました。コース沿いに立って応援している人たちの声です。昭一君は思わず見学席を離れ、門の所まで行きました。トップの子の姿が見えます。
「お〜い、がんばれ〜。」
 昭一君は叫びました。
「あと少しだぞ。最後までがんばれよ〜。」
 昭一君はもっと大きな声で呼びかけました。最後の一人がゴールするまで、その呼びかけは続きました。

※ この話に登場する「昭一君」は架空の名前です。