モラルBOX日記

【みよし市立三好丘小】スタートにかける思い

公開日
2015/12/22
更新日
2015/12/22

ちょっといい話

 「失敗しそうなことなんだけれど、失敗しないようにすること!」。A子の発言であった。「皆さんにとって『努力』とは…?」で切り出した道徳の授業の導入段階。教室の授業では控え目なA子が、この時ばかりは積極的な発言をしたことに、私は「すごい」と思った。が、A子のある場面を思い出した瞬間、「…そうだったよな!」と、あらためて私は熱い思いがこみ上げ、目頭が熱くなるのを覚えたほどだった。
 市の陸上大会。プログラムは100m女子。赤白の旗をもって、監察の仕事をしていた私の立ち位置はスタート地点のすぐ前だった。A子の名前が呼ばれ、彼女は緊張気味に返事をして右手を軽く上げた。確かめるようにスターティングブロックに足を合わせ、ていねいにしゃがみこむ。ひざを地に付け、手のひらを払うように二度「パンッパンッ!」と小気味よくたたいた。そして、きりっとした視線が100mのタータンに向けられた。繰り返し繰り返し、日差しの熱い夕方に練習してきたスタートダッシュ。0.01秒すら勝負になるこの種目にとって、最も重視されるポイントと言っても過言ではない。ピストルの合図を待つ彼女の一連の所作は、何か荘厳な儀式のようでもあった。「失敗は許されない!」。その思いがどれほどこの所作に詰まっていたのだろう。彼女の発言を聞き、その重みがいっそう伝わった。
 子どもたちの成長はめまぐるしいほどで、それゆえに一瞬にかける思いも計り知れないものがある。A子の一瞬にかけた大きな成長を見ることができたような気がした。